青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

コッペパンの魔術的な魅力について

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あらゆるパンの中でコッペパンが1番好きだと思う。コッペパンそのものの味を思い浮かべようとしてもどこかボンヤリしているのだけども、マーガリン、ピーナッツバター、ジャムを塗っただけでも抜群に美味いし、コロッケや焼きそばを挟んで総菜パンにしても最高。タルタルフィッシュなんかもいいな。ソーセージを挟むホットドッグバンズも大枠ではコッペパンらしいのだけども、あれはなんだか急に遠い存在に感じる。遥かなるアメリカ。とにかく、何を挟んでも美味いし、本当に1番。そんな甘い言葉を囁いたとしても、「どのパンにもそういうこと言ってるんでしょ?」なんてことは絶対に言ってこないと思う、コッペパンは。純朴で純粋なのだ。たまに揚げパンのように、道を踏み外してこんがり黒ギャルになるやつもいるけれども、それでも味わいはやっぱり素朴だ。


その魅力の8割を担うとびきりにかわいい名前”コッペ”の由来は諸説あるらしい。Wikipediaに①第二次世界大戦後の配給パンがクーポンと引換だったことからクーポンパンが訛った、②フランス語の「クーペ(切られた)」から、と2つの説が記載されている。何となくだけども、味わいのあるクーポンパン説を支持したい。板橋の誇る名店「丸十」がコッペパンの始祖とされているが、その創設者である田辺玄平のパン食普及への歴史は、完全にあの阿部和重の傑作小説『シンセミア

シンセミア(上)

シンセミア(上)

シンセミア(下)

シンセミア(下)

における「パンの田宮」の元ネタであるからして、調べてみるのも一興だろう。


数年前からじわじわとブームが到来しているようで、専門店や専門書も続々登場している。しかし、近所のパン屋さんで買うくらいが最も望ましいコッペパンとの付き合い方だ。数あるパンの中からコッペパンを選びたい。コンビニで売っているコッペパンだっていい。例えば、古からのロングセラー商品である山崎製パンコッペパン。あのずっしりと野暮ったいフォルムがいい。ハイカロリー過ぎて、完全に10代の食べ物であるからして、気が大きくなった日(半年に1回くらい)しか食べられない。10年くらい前、ポスティングのバイト中に腹が減り過ぎて道端で食べたコッペパンが染み渡るほど美味しく感じたのを今でも忘れられない。つい先日新発売となってファミリーマートの「ファミマのコッペパン」なる商品も新興勢力として見逃せないだろう。禁断のつぶあん&マーガリンを食べたのだけども、これがまたむちゃくちゃ美味かった。マーガリンがしっかりとしょっぱくて、あんこの甘味と信じがたいハーモニーを醸し出している。身体に悪いものを口にしているぞ!と叫び出したくなるような背徳感の塊のような食べ物。そんな罪すらを許し、包み込んでしまうのがコッペパンの持つおおらかなのだな。