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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

NHK『ドキュメント72時間』〜宮崎 路上ピアノが奏でる音は〜

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ドキュメント72時間』の1/27放送回「宮崎 路上ピアノが奏でる音は」が実に素晴らしかった。この『ドキュメント72時間』という番組の魅力を端的に表現しており、早くも今年度ベストに推したい気持ちを押さえられません。ナレーションは昨年デビューながら既にエースの風格の川栄李奈だ(息づかいが素晴らしい)。舞台は宮崎市の賑やかな繁華街にぽつりと置かれた一台のピアノ。いつでも誰でも自由に弾けるストリートピアノ、街興しの一環として設置されたものらしい。



なるほど、道行く人々がスッと吸い寄せられ、童謡、ジャズ、ロック、クラシック、ブルース、J−POP、映画音楽・・・自由に音を鳴らしては、またフラリと出て行く。弾くのが目的ではなく、あくまで何かの"途中"にピアノに立ち寄る。孫に会いに行くバスの待ち時間に、職場からの帰り道に、飲み会の締めに、はてはマラソン大会の途中に!1つの場所に定点カメラを置き、そこですれ違う人々のドラマの断片(あくまで断片なのだ)を写し取る、というこの番組のあり方と同調するようである。とりわけ、美しいシーンを紹介しよう。同じ大学に通う仲の良し3人組が、飲んだ帰りにフラっとピアノに立ち寄る。3人は寄り添いながら、ヒットソングであるBack Number「クリスマスソング」を真夜中に小さな音で弾き語る。カメラが置かれることがなければ、決して他人が触れることのできない秘密の戯れ。誰にも知られるはずのない濃密な時間。世界はこういった無数の”真夜中”でできているのだ。

今回がカメラが捉えたのは、東京で音楽の夢に破れた故郷に戻って来たコールセンター勤務の男性、夫を亡くしてからピアノを習い始めた初老の女性、プロを目指しながら運送会社で働く49歳の男性、ピアニストとして食べていくことを諦めた大学生、クリスマスソングをリクエストするクラブのママ、残してきた故郷を想いながらピアノを奏でる女子高生、亡き母の思い出を胸に深夜にピアノを弾く飲食業の女性etc....

もっと色んな人に聞いて欲しくて

これから家に帰っても1人だし
だれも話す人いないじゃないですか

上手ですね とか言ってくれるとうれしくて
家では全然 誰も言ってくれる人(いなくて)
1人暮らしだからね

懐かしい気持ちになる
ずっと聞いてくれるのがお母さんやったから
お母さんに喜んでもらいたくて弾くって感じはありましたね

あぁ、誰もが誰も胸に癒え難い"孤独"を抱えている。彼等をその想いを音に変え、そのメロディーが街の空気にスッと溶けていく。そう、ここは、みんなの"孤独"がほんのひと時、交わる場所なのだ。音楽は一体何の為に鳴るのか?芸術は何の為に在るのか?その答えを『ドキュメント72時間』のカメラが映し撮ってしまった。



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