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松本壮史『日本郵便WEB CM 「SNSでつながるあの子』篇』

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日本郵便のWEB CM「SNSでつながるあの子」編、ご覧になられましたでしょうか。「住所を知らない相手でも、SNSのIDだけで年賀状が送れるよ―」というサービスのCMなんですけども、これがまっこと素晴らしいのだ。SNSで知り合った、まだ顔を合わせたこともない、だけどもなんだか大切に想える相手。しかし、スマートフォンだけで繋がった2人は、些細なきっかけでいとも簡単に音信不通になってしまう。

二度と会えない気がして頑張った
まだ一度も会ったことないけど

とてもミニマムな、だからこそリアルで切実な『君の名は。』状態。おそらくこれは2016年現在のこの世界に無数に発生している普遍的シチュエーションであるはず。そこで登場する年賀状、断線されてしまった”想い”を届ける魔法のツールなのである(コマーシャルとしても完璧な出来栄え)。
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このたった1分40秒の傑作を監督したのは、松本壮史。音楽を担当しますは江本祐介。青春ゾンビ的2016年ベストムービーに認定したい桜井玲香乃木坂46)の個人PV「アイラブユー」を献上したあのタッグである。
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ちなみに2人はENJOY MUSIC CLUBというご機嫌なラップグループに所属している。彼らのMVも松本壮史が監督を務めており、最新作「夏の魔法」ではシャムキャッツのフロントマン夏目知幸を主演に迎え、センチメンタルな夏の夜を見事に切り取っております。
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とにもかくにも、映像分野における新鋭として、現在最も注目が必要な男、それが松本壮史なのです。今回のWEB CMにおいても、その才能はいかんなく発揮されている。前述の通り、脚本がまずもっていい。リズム、そしてメロディーすら聞こえてくるような、台詞廻しと編集の妙。これはもう”松本壮史”印と呼んでしまっていいだろう。”想い”の矢印や”未来の希望”を、勉強机の向きやデスクライトのON/OFFで視覚化していく演出も気が効いている。



主演2人も実に素晴らしい。ヒロイン役の女優”りりか”さんも断トツキュート。ホワイトソックスは正義だ。セーター、靴下と、白を基調とした衣装、美術の中に埋もれぬ輝きを放っています。彼女が年賀状を受け取るカットで、指に輪ゴムを指にひっかけているのも最高だ。クローズアップされる”顔”もいい。勉強机のサイドに鞄を引っ掛けてるのも好き。松本作品はいつだって美術の演出が細かいのがいい。演劇集団ロロの傑作シリーズ『いつだって可笑しいほど誰もが誰か愛し愛されて第三高等学校(いつ高)』にて、我らが将門を演じる亀島一徳が再び高校生役で登板。さすがはロロの看板俳優。松本壮史が表現したいリズムとメロディーを完璧な発話でこなしているように思えます。制服に羽織るチェックのダッフルコート+リュックというルックがかわいい。ダッフルが部屋の窓際にも吊ってあるのもポイントだ。思春期男子の七不思議の1つ、ハンドグリップによる握力強化なんて小技もバッチリ決まってる。そして、あのラストシーンの表情が絶妙。見えないはずのものを見つめるまなざし。あのまなざし1つで、空間の隔たりを、時間を、ピュンと飛び越える。僕たちはいとも簡単に繋がってしまえるのだ!



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