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SMAP「たいせつ」について

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SMAPが解散するまで残り2ヶ月を切った。こんな残酷なカウントダウンに遭遇することになるなんて思いもしなかったですよね。ここ最近はすがるように、SMAPの音楽を熱心に聞いている。数多の楽曲の中でとりわけ私の涙腺を刺激して止まないのが「たいせつ」だ。1998年リリースの28枚目シングル。

たいせつ

たいせつ

夜空ノムコウ」という超ド級のシングルの次の一手(しかも次が「朝日を見に行こうよ」だ)だった為か、個人的にはリリース当時の印象は薄い。いや、

スッパマンじゃない
スッパマンじゃない
スッパマンじゃないけれど

の印象があまりに強すぎて、曲全体がボンヤリしていたのだ。つまりトップ画像の通りである。この鳥山明脳はお恥ずかしい限り。大いなる損失である。リクエスト投票で収録曲を決めたベスト盤『SMAP 25 YEARS』にはしっかりランクインしているわけで(49位・・・ギリギリ!)、聡明なファンの皆様につきましてはとっくにその素晴らしさは周知の事実かと思われますが、蛇足までに語らせて頂きたい。とにもかくにも歌詞がいいのである。もう読んでいるだけで泣いてしまうほどに好きだ。全部載せると怒られそうなので、とりいそぎ歌い出しの歌詞を眺めてみて頂きたい(あとで調べて全部読んでね)。

夕暮れがきて ビルも舗道もはなやぐ
信号待ち 君は助手席で
渋滞の街 見上げて
うれしそう I Wonder

ささやかでもそれぞれに
暮らしなのねと Just ホロリ
誰とも似ていたくない
ずっと前の僕じゃ
なくてよかったよ

「夕暮れがきて/ビルも舗道もはなやぐ/信号待ち」という短いセンテンスでもって、あっという間に煌びやかな都会の夜を立ち上げてしまうその言葉の速さと強さ(それでいて軽い)がもう”詩”としか呼びようがない。続いて、「何故か渋滞をうれしがる彼女」という描写がなされる。私たちはこの箇所を「あーハイハイ、”少しでも貴方と長くいられるから”的なやつね」とセオリーで読んでしまうわけだが、そんな予想を覆す展開が待ち受けている。「ささやかでもそれぞれに/暮らしなのねと/Just ホロリ」とさっきまでうれしそうにしていた彼女が涙を流す。ここまでだけでは情緒のいかれた貴族の娘である。重要なのは、車の中の”僕ら”もこの夜景を形成する一部であり、渋滞を引き起こしている原因である、ということだろう。ささやかな、ありふれたデートを楽しむ自分達のような人々が作り出す光の1つ1つで、この街の夜は出来ている。その何気なくも壮大な事実に彼女は感激の涙を流すのだ。それに応えるように、「誰とも似ていたくない/ずっと前の僕じゃ/なくてよかったよ」と彼をこっそり想う。「もともと特別なオンリーワン」と高らかに歌う後のSMAPの主張とは異なってきてしまうのかもしれないが、この「たいせつ」におけるSMAPは(すでにしてスーパースターでありながら)、数知れぬ匿名の市民として社会に埋没することへの敬意、そして、そこで繰り広げられている名もなき恋や愛が(それはもしかしたら、5人のアイドルに向ける気持ちでもいいかもしれない)、いかに人々の孤独を埋めているかを歌っている。人はスーパーマンじゃない。

Everything is oh My 君となら
越えていけそうな気がするよ
“たいせつ”だって思わなきゃ
みんなひとりなんだ
不安なんだ
愛が支えなんだ

これはポップソングの在り方の理想の1つなのでは、と私は想うのだ。ちなみにこちらの「たいせつ」、作曲は「SHAKE」「ダイナマイト」「らいおんハート」「BANG! BANG! バカンス!」でお馴染、安心と信頼のコモリタミノル先生。ゴージャスなアレンジは長岡成貢である。SMAPをはじめとするジャニーズ事務所の多くの名曲のアレンジに関わっている功労者だが、個人的にはバブルガムキッズソウルグループFolderの残した傑作「Glory Glory」の作曲&編曲として誉れ高い。コーラスアレンジもとにかく豪華絢爛。あと、個人的にはAメロの稲垣吾郎さんの歌詞の感じ好きです。そして、偉大なる作詞家・戸沢暢美(「KANSHAして」「胸騒ぎを頼むよ」)に溢れんばかりの感謝を。彼女がポップソングの中で紡いできた人々の何気ない所作や感情が、どれほどの人の胸を鼓舞してきたことか。どうか安らかにお眠り下さい。



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