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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』

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ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうのだけど、ふとした瞬間にある出来事がパッカーンと完璧に詳細に思い出されてしまって、甘く切ないような気持ちに胸を震わせたりする。例えば、懐かしいアニメの主題歌を街で耳にした時。音楽というのは記憶と密接に結びつくものだから、忘れてしまいそうな(忘れたくない)ことがあるならば、メロディにリズムに歌声に、ぜんぶ閉じ込めておくといい。そんなレコードが1枚でもあれば、そいつを再生さえすれば、過ぎ去っていったはずの想いや空気が蘇る。”ノスタルジー”だなんて笑わないで欲しい。全部忘れたくないのだ。それらは燦然と輝き、まだまだ続くぼくたちの進む道を、後ろから照らしてくれるだろう。



ザ・なつやすみバンドがリリースした『PHANTASIA』というレコードは、そんなポジティブなフィーリングに満ちている。前作『パラード』

パラード

パラード

において、「毎日がなつやすみだったらいいのなあ」と諦めに近い祈りを発していた頃と比べると、幾分も頼もしい姿だ。夏がくれば思い出す、忘れたくない事すべてを。それだけで”なつやすみ”の有限性は打ち破られ、拡張して宇宙にまで広がる。ザ・なつやすみバンドの音楽は、星と星の間で鳴り響くジュブナイルシンフォニーみたいだ。大人になってしまった私達に

魔法を信じ続けているかい?

と問いかけている。携帯アプリゲーム『ポケモンGO』によって、かつての子ども達が童心に返ったように、それぞれの”なつやすみ”を満喫している2016年夏のサウンドトラックとしてあまりにふさわしいと言えよう。



youtu.be
格段に向上したボーカルの表現力とリズム隊のアンサンブル(ドラムの抜けの良さ!)、管弦楽器の鳴りを包み込む柔らかいプロダクション、ストレンジなコーラスワークと曲展開、それらをポップソングとしてまとめあげる圧倒的なソングライティングの充実。これまでのディスコグラフィーを眺めても極めて理想的な跳躍を見せた3rdアルバムである。澤部渡(スカート)、猪爪東風(ayU tokiO)、Fasta Money Talk(Magic,Drums&Love)、藤原亮(フジロッ久(仮))、江本祐介(ENJOY MUISC CLUB)etc....個人的にお気に入りのポップソングメイカ―は数多存在するわけですが、中川理沙にMC.sirafuと、1つのバンドに国内指折りのソングライター(まじでユーミンとか矢野顕子とかaiko級なんです!)が2人同時に存在してしまうザ・なつやすみバンドの贅沢さを改めて痛感させられます。



さて、「D.I.Y.〜どこまででもいけるよ〜」がNHK Eテレの教育番組『シャキーン!』で使用されている事からも伺えるように、ザ・なつやすみバンドと子ども番組の親和性は高く、その優れたソングライティングが目指す先は“ポンキッキーズ・メロディ”と言えるのではないだろうか。嫁入りランドをゲストに迎え入れた「GRAND MASTER MEMORIES」のチャイルディッシュな万能感などはまさに“ポンキッキーズ・メロディ”。バンドの新しい代表曲となるべく、テレビや街で流れまくって欲しいものだ。Hi,how are you?のライブを初めて観たHomecomingsが「ポンキッキぽいね!」と話しかけたという、2つのバンド出会いのエピソードがとても好きなのですが、この国のポップミュージックには “ポンキッキーズ・メロディ”という言語化しがたい黄金律といったようなものが確かに存在するのです。このエントリーの文脈内であえて言語化してみるなばら、忘れたくない事を託せる強度を持ったポップソングというやつだ。正しくは“ポンキッキーズ・メロディ”というのは、『ひらけ!ポンキッキ』や『ポンキッキーズ』で使用された楽曲の事を指す。

例えば、森高千里「ロックン・オムレツ」、山下達郎「パレード」、斎藤和義「歩いて帰ろう」、大江千里「夏の決心」、矢野顕子「夢のヒヨコ」、和田アキ子「さあ冒険だ」、安達祐美「逃げたいときは」、小沢健二「オナラで月まで行けたらいいな」、スチャダラパー「大人になっても」、Folder「パラシューター」、鈴木蘭々「キミとボク」、つじあやの「こころは君のもとへ」etc・・・・どうだろうか?このリストだけで『PHANTASIA』というアルバムの批評として成立してしまうようである。この輝かしいポップミュージックのタペストリーに編み込んでみたとしても、何ら引けをとらない強度を、ザ・なつやすみバンドの音楽は持ち合わせている。そう胸を張って宣言させて頂きます。



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