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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

玉田企画『あの日々の話』

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面白過ぎる、と思わず唸ってしまった。大学のゼミ合宿を舞台とした『怪童がゆく』も良作でしたが、サークルのカラオケオールを描いた今作はネクストレベルに到達している。とりあえず観て頂きたいので、小竹向原のアトリエ春風舎へ急げ!と先に記しておきたい。決起会と称したサークルの代替えを祝う飲み会がカラオケボックスで行われている。ひたすらに若者達が他愛のない会話を交わす、群像口語劇だ。圧倒的なリアリズム(=”あるある“)に支えられた人物造詣、台詞回し、役者の演技(素晴らしかった!)が紡ぎ出す、もはや“現象”としか呼びようのないものが、ただ生々しく舞台上で再現される。それを観客は、体験するかのようにして共有する。大学のサークルの飲み会を体験?そんなものが面白いのか?いや、これがノスタルジーやなんやを抜きにして、面白いのである。何故、これほどに面白いのかというと、観客である我々は、飲み会に参加しながらも、さながら神の視線で全貌を俯瞰している。そこで渦巻く人間模様、横滑りの会話の裏に潜む登場人物の思惑全てを把握できるからに他なるまい。圧倒的にスリリング(しかも自分には無害な)な飲み会への参加を約束されているようなものだ。


そして、玉田企画は笑える。とにかく、笑える。日常に潜む気づまりやすれ違いを、ごくナチュラルに笑いに転化させていく手つきは、東京03かもめんたる*1といった『キングオブコント』のチャンピオン達と共鳴している。コントのようなデフォルメがない分、玉田企画の笑いは”親切さ”には欠けるわけだが、そのリアリズムは心の深い所をえぐる。「人ってこういう時、イタいですよね」と実に底意地悪く、そのサンプルを提示してくるのだけども、登場人物は皆、どこかイジらしく、かわいいらしいのも素晴らしい。


さて、そもそも会話劇というものを演劇界(小劇場界隈)は、どうにも低く見積もるきらいがないだろうか。確かに、玉田企画の舞台にはマームとジプシーの運動量やヒリヒリした傷みも、ロロのようなイメージの跳躍もない。しかし、緻密な会話の糸を丹念に編み込み、それだけでゼロから物語を紡ぎ出してしまう筆致というのも、それらと同等の才気だ。玉田真也は天才なり、と断言しておきたい。



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*1:今作のアフタートークにも登板