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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

中園ミホ『トットてれび』6話

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素晴らしい!何たるラブストーリーであることか。黒柳徹子満島ひかり)と渥美清中村獅童)の本当の心の内は当人達にしかわからないわけだけども、この『トットてれび』においては、2人は互いに異性に向ける好意のようなものを持ち合わせている。

徹子さーーーーーん、好きです!俺ぁはあんたを幸せにすっから
一緒に所帯ぃ持ってくれー

という渥美清が叫ぶ。ドラマ『お父さんの季節』のリハーサル風景なわけだけども、どうにもこのプロポーズが巧くいかない。声が大き過ぎたり、カメラに目線を送り過ぎてしまったり(トットちゃんの「国民へのプロポーズじゃない」という小さいツッコミが最高)。このリハーサルが、まったくをもって不器用でシャイな2人のラブストーリーの運命を物語っているようだ。相手を盗み見てみたり(控え室の鏡を使った演出!)、素敵な物語(『星の王子さま』だ)をプレゼントしてみたり、「あなたに着いていく女はなし」と激昂してみたり。トットちゃんのそれは恋する女の子そのものだ。しかし、魂は互いに強く惹かれ合いながらも、男女の一線を超える事はない。トットちゃんは渥美を「お兄ちゃん」と呼び、渥美はトットちゃんを「お嬢さん」と呼ぶ。

別の世界では 2人は兄妹だったのかもね

youtu.be
ceroの「orphans」という楽曲のフレーズが思わず頭の中で再生されるではないか。つまり2人は互いに強い愛情を抱きながらも、それを「決して結ばれることのない(結ばれてはないけない)関係性」にしまい込んでしまうのだ。あぁ、なんと切なく美しいことか。

お嬢さん
元気ですか?僕はもうダメですけど
お嬢さんは元気でいてください

渥美は病に倒れる。撮影所におけるトットちゃんと渥美の生涯最後の会話。まったくあの中村獅童の素晴らしさときたら。
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喜劇王渥美清が魅せる泣き笑い。これまで満島ひかりの凄さはもう散々語り尽くしてきたわけだが、前話のミムラ向田邦子にしろ、この中村獅童渥美清にしろ、魂そのものが乗り移ったかのような所業だ。中村獅童の演技は、渥美清という国民的スターもまた黒柳徹子と同様に、どこかこの世界に居心地の悪さを覚える"星の王子さま"であった、というのを見事に体現している。



ラスト、トットちゃんはブラウス(しかし、どこか花嫁衣装のような)を身に纏い、靴を脱いでスタジオに入る。渥美との出会いのシーンをやり直すわけだ。すると、チンドン屋の格好をした渥美が現れる。夢だ。夢に違いないわけだけども、2人がかつて共演したテレビ番組はそう、『夢であいましょう』であった。渥美はトットちゃんと腕を組み『男はつらいよ』の主題歌を歌いながら、商店街を練り歩く。

俺がいたんじゃ お嫁にゃ行けぬ
わかっちゃいるんだ 妹よ
いつかおまえの よろこぶような
偉い兄貴になりたくて
奮闘努力の甲斐も無く
今日も涙の
今日も涙の 日が落ちる
日が落ちる

あぁ!『男はつらいよ』という作品もまた、実の所、寅次郎と腹違いの妹サクラとの近親相姦をひた隠した長い長いラブストーリーであったようにすら思えてくるではないか。永遠に結ばれない、だからこそ永遠に美しいままの純愛。泣いてたまるか



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