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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

タナカカツキ『サ道』『サ道~マンガで読むサウナ道~』

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タナカカツキがサウナに関する本を出した。『逆光の頃』『バカドリル』『ブッチュくんオール百科』『オッス!トン子ちゃん』といったバイブル級の作品を世に送り出した偉人にしてはずいぶんぬるいではないか(サウナのくせに)、『コップのフチ子』でいくら儲けたんだ!!とスル―していたわけですが、謝罪である。熱々でした。

サ道

サ道

いや、これはほんとにヤバい本ですよ。単なるサウナハウツー本ではない。快楽へと誘う禁断の書です。サウナというのは、世が世なら禁じられてしまうような中毒性をもった快楽行為、言うなれば合法ドラッグなのである!!というような事がひたすらに書かれている。
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何と言っても秀逸なのはディープリラックス状態を表現した”ととのった”というフレーズだろう。リラックスというレベルを超えた意識の拡大をもたらす現象を指す言葉だ。この状態に突入するには、本誌によればサウナ→水風呂→小休憩というセッションを3度行う必要があるという。できれば、最後に身体をふき、風にあたりながら横になるのが望ましいようだ。そこで”ととのう”。身体に心地よい痺れが表れ、頭がボーっとするやいなや全能感に包まれる。どう聞いても怪しいわけですが、カラクリを聞くと納得してしまう。急激な体温の上昇、冷却を繰り返すことで、毛細血管が伸縮し、激しくなった血流が全身にいきわたる。すると、身体の中で最も”酸素欲しがり機関”である脳に大量の酸素がドカンドカンと送り込まれ、喜んだ脳が異様なまでの快感ホルモンを分泌する。これが”ととのう”の仕組み。至極、シンプルで明快。何やら危険そうにも思えるが、血流の活性化は肌や細胞の老化防止などにも有効な全うな健康法であるらしい。
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赤塚不二雄とレイヴカルチャーを通過している作者ならではのトリップ描写も抜群。キャッチーな絵柄と抜群の構図も決まっている。水風呂に浮かびながらの「どこまでも広がる身体感覚!」だとか「ニルヴァーナを体験せよ」「高次元をアセンションされたし」といったワードセンスも好奇心を刺激します。コミック版も読みやすいですが、サウナひいては風呂の歴史にまで話が展開されていく、エッセイ&イラスト版の『サ道』も抜群に面白いのでオススメです。とにもかくにも、これらを読んで、「サウナ行かなきゃ」とならない奴はただの臆病者なのである。いざ、快楽へと続く扉へ。



というわけで、いてもたってもいられなかうなりさっそくサウナへ突撃。いきなりスーパー銭湯はハードルが高いという事で近所にサウナ施設付きの銭湯を探してみる。所謂昔ながらの銭湯にはやはりサウナはないが、マンションの1階などに作られた近代寄りの銭湯にはあります。サウナはおろか銭湯に行く経験も少ないので、緊張してしまう。ルールがよくわかないのだ(あの椅子とか桶は使った後、どこに返却するのか?とか)。460円の入浴料を払い、服を脱ぎいざ浴場へ。とりあえず身体を洗い、湯船に浸かる。ここでもう満足なのだけども、お目当てはサウナである。高ぶる気持ちを抑えながらサウナ室の扉を開けようとすると開かない。押しても引いても開かない。貼り紙を読んでみると、何とサウナは別料金を払い、受付で専用の鍵をもらわないと入れないのだという。面倒くさいが、身体を拭いて服を着て、受付へ。追加料金を払うと(こちらの銭湯は150円でした)、雲型の鍵を渡される。こちらを鍵口にひっかけて引けば扉が開くというわけだ。他に利用者はゼロ。サウナ1人占めである。とりあえず7分サウナで蒸される。そして、いざ水風呂へ。私、作者同様に、これまでサウナには入るも、水風呂に入るという行為を敬遠しておりました。いくら火照っていようにも少し身体にかけただけでビクっとなるほど冷たいじゃないですか、水風呂。しかし、本書を信じ、思い切って浸かってみるとあら不思議、平気なのだ。いや、むしろ気持ちいい。尋常じゃなく気持ちいい。身体に籠もった熱、皮膚と水との間に羽衣を纏わせる為、寒さを感じないらしい。顔は冷気でクールダウンされ、身体はポカポカ。身体中を血が巡っていくを実感しながら、ユラユラと揺れる水面を眺めていると、完全にキマってきます。3度のセッションを終え、脱衣所の椅子に座り、扇風機の風なんかを浴びてボーっとしていたら、言われもない多幸感に包まれました。完全にととのった!タナカ先生、ありがとうございます。おとうさん、おかあさんありがとう、とこの世に生をうけた事にまで感謝するトリップ感覚もたまらないが、素晴らしいのは、血のめぐりが良くなる事で、肩凝りなどの慢性的症状が(一時的にせよ)解消する事だろう。身体も軽くなり、スーパーリラックス。サウナ、これははまりそうである。



・・・翌日、私は気がつけば銭湯に居た。昨日とは別の銭湯である。悪い事をしているわけではないのにどこかやましい気持ちがするのは何故だろう。裸になるからだろうか。そういえば、風呂屋も風俗もどちらにも”風”という字がある。ドラッグに手を出したら一発で身を滅ぼすタイプだな、と自覚した後、入浴開始。今回の銭湯はサウナをつけると、タオルなども全て込みで800円。露天風呂もありました。しかし、そちらには目もくれずサウナ。ひたすらサウナ。2回目という事で調子に乗り、水風呂のあまりの気持ち良さに長時間浸かってしまい、立ちくらみに襲われる。少し気分が悪くなり、風呂場の明かりが全て虹色に見えるほどにトビました。ここらへんは経験である。もっとうまくととのえるようになりたい。この日は1人だけ利用者がいて、先輩はセッションを短時間で5回も繰り返し、サウナ時は床に柔道の受身を取るような形で寝そべっていた。色々な楽しみ方があるものである。次はスーパー銭湯にて極上のリラックス体験を味わおう、などと涎を垂らしながらこの記事を書いている次第であります。