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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

衿沢世衣子『うちのクラスの女子がヤバイ』1巻

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『ちづかマップ』『シンプル ノット ローファー』などでお馴染の衿沢世衣子の最新作。どちらかと言えば、何でもない日々を描く事に長けた作家という印象の、衿沢世衣子が超能力という題材に挑む。いや、しかし安定の面白さです。SF的感性に彩られた非日常を、当たり前の日常として収束させるその手腕は、そこはとなく高橋留美子的(ウィルコさんの造形!)。表紙のイラストもどことなく留美子。ときに高橋留美子的なラブコメが今、ジャストな気がするのは何故なのだろう。


1年1組の女子生徒は、思春期のみに発動するという超能力を持ちあわせている。それらは「無用力」と呼ばれていて、心拍数が上がると透視できる、イライラすると手がイカになる、夢が空に映し出される、握ったおにぎりが人の記憶を消してしまう、etc・・・というように、これと言って役に立たないし、さして害ももたらさない。無用力というその名の通りに実に微妙な超能力なのだ。しかし、まぁ超常現象ではあるわけで、周りの人もそれなりに驚きはするのだけど、すぐに「あぁ無用力ね」と受け入れる。その無用力に振り回されまくるクラスの男子も、女子との間に横たわる決定的なその差異をスッと飲み込む”いい男”達なのだ。そこがいい。荒唐無稽な設定のようだが、誰もが経験したであろう思春期特有の心と体のバランスの悪さが見事にトレースされた無用力という現象が優しく肯定されていく時、読者である我々の思い返すだけで悶絶の青春もまたスッと包み込まれるような心持になります。
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1巻の個人的なベストは5話での記憶喪失おにぎりのミクニさん。野球部が舞台なのも◎です。消失した記憶が、カメラの広角やズームで再発見されて、聞こえなかった(青春の)か細い声を大きく鳴らす所が、とっても泣けます。2話での「降りてこい」と注意されたマッコウくんが、時間差でプールに飛び降りてくるシーンも好きだし、4話のヤマモトくんのブルゾンの着こなしも好きだ。2巻も大変に楽しみで、ございます。



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