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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

横山旬『変身!』

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いきなりだが、『変身!』は傑作である。月刊コミックビームで連載されている漫画作品で、現在単行本は2巻まで刊行されている。ロロの三浦直之がTwitterで称賛していたので、手にとってみたのだけども(彼のセンスを信頼しているのだから当然と言えば当然なのだが)これが本当に素晴らしい作品だったのだ。作者である横山旬にとってこの『変身!』が長編デビュー作にあたるらしいのだが、にわかに信じがたい。事実であるならば、これはもう破格の才能だろう。


何にでも変身できる能力に目覚めた少年とその同級生の少女とのSFチックなボーイ・ミーツ・ガールだ。何にでもなれる(変身できる)のだけども、何者にもなれなそうにないというあの思春期の悶絶が描かれている。メタモルフォーゼを繰り返す事で逆説的に自身の実存が揺らいでいく。やはり、ややこしくねじれまくった青春というのは、それに負けないくらいにハチャメチャな様式で語られなければ、その核心を捉えられないのかもしれない。青春を掴み取るには、時をかけねばなるまいし、お化けやゾンビには遭遇したいし、宇宙人の同居人は必要だし、当然メタモルフォーゼくらいはしておきたいものです。さて、作品は血の繫がりや性の葛藤(主人公はバッタにメタモルフォーゼし、勢いで雌バッタと交尾してしまう事で童貞を卒業します)を経て、更には「自己と他者」「社会的実存」といったテーマにまで潜っていきます。だてに『変身』(フランツ・カフカ)というタイトルを冠していません。しかし、あくまで質感はライト&ポップ。荒唐無稽のようでいて、実に細かい設定やウンチクが、いい塩梅に作品を締めていて、読み易いのです。


魅力的なキャラクター造詣やストーリー構成も文句なしなのだが、何と言っても驚かされるのはその画力である。緻密さと大胆さを兼ね備えたカメラワークに支えられた構図の充実、その中で巻き起るアクションのダイナミズム、その身体的躍動。絵が動き出すようだ、というプリミティブな漫画読みの喜びがここにはある。『変身!』は画が物語を牽引する正しき青春活劇だ。宮崎駿黒田硫黄をフックアップしたように(横山の太い線は黒田硫黄を彷彿とさせる所がある)、横山旬の作品もまたジブリに動かしてもらう事を待っているように想います。高低感の強い建造物の配置、少女趣味なフェティッシュ具合なども実に宮崎駿好みのように想うのだけど、どうだろう。激烈レコメンドでございます。