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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

玉田企画『怪童がゆく』

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噂はよく耳にしていて、ずっと気になっていた玉田企画をついに目撃する事ができた。いやー素晴らしかったです。凝った仕掛けがあるわけでもなく、戯曲と役者だけで成立しているようなシンプルな口語劇なのだけど、これがどうにも抜群に面白い。大学のゼミ合宿、という舞台設定からして最高なのだけど、その中で繰り広げられるとてもミクロなすれ違い、摩擦に執拗にフォーカスする事で、気まずさを笑いに変換している。ゼミ合宿の2日目の予定として、文化資料館と遊園地のどちらに行くかべきか、という議論を劇中においてひたすら交わしていくのだけども、その表面上シンプルな口論の後ろで、言葉にはされない複雑な思惑と人間関係が蠢いている。まさに平田オリザチルドレンといった戯曲なわけですが、語り口の軽妙さと現代的な笑いのセンスが五反田団、ハイバイ以降という感じで、実に頼もしい。実際、関わっている役者はその2劇団回りの方が多いようで、『怪童がゆく』では元ハイバイの吉田亮が出演している。特筆すべきは、人物造詣や空間の描写のあまりにリアルな精緻さだろう。よほど観察力に長けているのか、嘘くさい台詞がないのでずっと観ていられる。「あるある」「いるいる」という共感を通り越して、まるで観ている私自身が舞台上にいるような気分になる。送別会でのプレゼントを渡すシーンでは、舞台上の拍手の輪に参加しようとする自分を寸での所で止めたほどである。異言語間のディスコミュニケーション、心と身体のズレからアンジャッシュ風のすれ違いコントまであらゆるバリエーションの捻じれがこれでもか、と提示されて、もう大満足。甘酸っぱい成分とかホロリとさせられる要素の塩梅も絶妙。実にウェルメイドな1作だ。

 

作・演出を担当する玉田真也の役者としてのクオリティにも驚かされた。中2男子の演技なんていうものは正直もう散々観てきてお腹いっぱいなわけだけど、玉田のそれは頭一つ抜きん出た細かさと発話力を獲得している。逸材だ。ラブレターズ塚本直毅と親交を篤くしているそうだが、なんて腑に落ちる組み合わせだろう。この公演にもかもめんたる槇尾氏が観劇しているなど、コント界からの視線も熱い。テレビ東京のプロデューサー佐久間宣行氏に発見・起用され、エッジの効いたコントをテレビで量産して欲しい、というのは気が早いのだろうか。しかし、間違いなく何年後かにはハイバイ岩井秀人、五反田団の前田司朗の位置まで昇りつめる作家であろうから、今後の作品は目を通していきたい次第であります。