青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

Q.B.B.『中学生日記』

中学生日記 (扶桑社文庫 く 3-2)

中学生日記 (扶桑社文庫 く 3-2)

中学生日記 (新潮文庫)

中学生日記 (新潮文庫)

風邪で寝込み、会社を休んだ。眠り過ぎて眠れなくなり、ベッドに寝転びながら、もしくは、冷凍のうどんをすすりながら読み返す『中学生日記』に猛烈に感動してしまった。そういうシチュエーションがまた妙に合う本なのだ。本作について簡単に説明すると、『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』の大ヒットで時の人と化している久住昌之が実弟の久住卓也と組んだQ.B.B.名義での作品であり、『ガロ』『マンガの鬼』『アックス』と雑誌をまたいで連載され、1999年には文藝春秋漫画賞を受賞した出世作だ。山下敦弘が2006年に短編映画化した事でも知られている。まさに”久住印”といった感じの言葉のキレは既に健在で、その会話劇のセンスは単なる”あるある漫画”に収まろうとしない。

蒲団の中で「これはもう聖書だな」などという、わけのわからぬ興奮に包まれた。”すべて”が描かれているからだろう。どうしようもなくかっこ悪くて情けなく、それでいて何故だか”最強”だった中学生という季節のすべてが。作者あとがきに

中学生日記』というタイトルは、もちろんNHKの長寿人気番組『中学生日記』を横目に見ながらつけたものだ。でもNHKの番組は、絶対出てこない話しか、描かなかった。NHKにはうつらない部分が、中学生生活の99%だ。

という至言があるわけですが、まさにNHKはおろか『3年B組金八先生』も『鈴木先生』も取り零してしまっている、くだらなくも切実な思春期の感情の機微が本作には収められている。ニキビから出た血を指摘される恥ずかしさ、床屋での”坊ちゃん刈り”の恐怖、自分のお金(と言ってもお小遣いだが)で初めて買う石焼きイモの味、あんなに楽しみだった近所のお祭りが途端につまらないものに思えた中学生1年生の夏。
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絶対に戻りたくはないが、無かった事にはどうしてもしたくないあの恥ずかしき青春の日々。こちらにすべて保存されています。マストバイ!扶桑社文庫版も新潮社文庫版でもamazonで1円放出されてますので、未読の方はぜひ手にとって頂きたい。