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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

フジロッ久(仮)『おかしなふたり』

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ボーイミーツガール。古今東西あらゆる物語がそのまぶしさにあやからんと題材として取り上げ続けてきた永遠のテーマであります。いや、むしろ遅刻しそうな2人の男女が道の角っこでぶつからなければ、どんな物語も始まらないし、その激突は言うなりゃ”ビックバン”、そこからやっと宇宙も始まるのです。フジロッ久(仮)は”ボーイミーツガール”が持ち合わせるそんな特大の煌めきのパッションを4分たらずの楽曲に完璧に閉じ込めてしまった。“誰もみな手をふってはしばし別れる”のだから、たとえどんなに困難な状況だろうと、出会えたからには声の限りに「あいらぶゆー」と叫び、それをキャッチしなくちゃ!というとびきりに力強い切実なラブソング。タイトルは「おかしなふたり」、新体制フジロッ久(仮)がドロップする最初のアンセムだ。パンクもソウルもアニソンも全部詰まった、とびきりのピアノロックンロール。荒々しいパンクバンドだったフジロッ久(仮)は初期衝動のその先のグルーヴを完全に会得している。”命が踊る、気持ちが起こる”演奏に、零れ落ちんばかりにこれでもかと詰め込まれたメロディーと言葉。磨き上げられているのだけど、決してお上品にはまとまらず、枠からはみ出さんと飛び跳ねている。高橋元希のリリックを借りるなら、「坊主よく見ておきな これが大人のスキップだ」ってな感じ。


これまでも書いてきた事ですが、フジロッ久(仮)というのは小沢健二THE BLUE HEARTSがバンドを組んだような、ちょっと嘘みたいに素敵な”ミーツ”で出来上がったコミュニティなのだ。であるからして、言葉の飛距離がとてつもない。理論的にリリカルに丹念に編み込む藤原亮と、実直に魂を込めて放つ高橋元希の、言葉のタペストリー。他ではなかなか味わえまい。活動初期から炸裂していたサンプリングセンスも相変わらず抜群。代表曲「はたらくおっさん」では「おどるポンポコリン」から絶妙な按配で抜き取っていたわけですが、今回は『クレヨンしんちゃん』より名曲「オラはにんきもの」から頂戴。チャイルディッシュな全能感に加えて、金土曜のウキウキも加わって、これはまさに週末ソウル。2曲目にはヨシノモモコの新ユニットmomo-seiの名曲「大きなスペース」をアーバンにカバー。藤原亮の藤原亮のデュエット!更にはねじ梅タッシとのスプリット7インチでリリースされたストレートラブパンクチューン「結婚しようぜ」が激スウィートなラヴァーズに生まれ変わった3曲目。どちらもフジ久の歌謡センス、藤原亮の歌の巧さが際立ちます。こんな3曲でなんとお値段690円!少なくとも6969枚くらいは売れて欲しいオススメ盤でございます。