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青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ナカゴー『率いて』

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ナカゴーの本公演『率いて』をムーヴ町屋で鑑賞。今、足繁く公演に通う価値のある劇団はナカゴーくらいのものだろう、という暴言を吐きたいほどに、いつ観ても新鮮な驚きを纏った物語と笑いを提供してくれる。唯一無二。もし、演劇方面に目配せをしているお笑い芸人が、ナカゴーの公演を観てしまったら、「この畑はやめておこう」と思う事だろう。なんというか筋力が違うのだ。主催・鎌田順也の書く笑いが、どういう文脈の元に編まれたものなのか。最近の強い関心事の1つです。


本公演は劇団員のみが出演。こう、改めてナカゴーの面々だけをじっくり観てみると、こうもルックスや声に癖のある役者を揃えた劇団があろうか、と新鮮に驚いてしまう。ナカゴーが作品の舞台や上演場所に選ぶのは町屋や王子といった、およそ東京の主役とは言えない外れた場所で、登場人物達はだいたい「モスバーガー」だとか「とんかつ和幸」だとか「サンマルクカフェ」といったチェーン店の店員だ。よく映画などで、「決して物語の主人公にはなれないような2人の恋愛です」みたいな売り文句でありながら、それを眩い美男美女が演じているのを見かけるわけですが、そういったニセモノとは違うぞ。これぞ匿名の小市民だ!というルックがナカゴーの演劇にはある。しかし、そんな出演者全員がスターの輝きを舞台上から放っているものだから、自分はナカゴーという劇団に恋をしているのだな、と思い知らされます。


霊の見える少女、とその家族(と隣人)の物語。大胆に台詞がサンプリングされる是枝裕和『そして父になる』とジャパニーズホラーが並行して走っていくような前半が終了しかけると、物語のギアが強引に変わる。観る者の予想と期待を裏切り、いや更新し続けながら、物語がのたうち回る。このドライブ感を演出できるのは世界広しと言え、ナカゴー鎌田順也とクエンティン・タランティーノだけなのでは、と真面目な顔で想っている。役者が同時多発的に大声で叫び倒し、フィジカルを追いこむナカゴーの定番の演出には、嫌悪感を覚えるタイプの観客も少なくはないだろう。しかし、私にとってナカゴーのそれは、緻密に計算されたノイズミュージックのようなものであり、心地よさすら感じるのであります。登場人物達は不条理な状況の中で、ひたすらにズレた行動を取り続け(そのやり取りの見た事なさときたら!)、笑いを加速させていく。それはどこまでもズレており、あまりにもバカバカしいのだけども、舞台上に立ち上っているその”ひたむきさ”というか”真剣さ”には心震わされずにはいられない。そして我々は、前半なんら響いてこなかった『そして父になる』的メッセージが自分に届いている事に驚くだろう。ナカゴー、今1番人に薦めてみたい劇団だ。