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『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD』&『いろはに千鳥』

千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD

千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD

『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD』という作品があって、千鳥という芸人のロケテクニックと笑いのセンスが3時間近いフルボリュームで収められた大傑作であり、個人的に「お笑いDVD」というカテゴリーの中で最も愛してやまない1枚だ。漫才やコントは一切収録されておらず、タイトル通り、白いピアノを山の頂上に運ぶという内容が収められたロケDVDなのだが、これが信じられない面白さなのだ。白いピアノを山に運びたい、という動機も目的も不明な一連の軸の中で、お金持ちにピアノを譲ってもらおう、ピアノを買いに行こう、ピアノを白く塗ろう、山へアポイントをとろう、ピアノを練習しよう、山登りの練習をしよう、ピアノを一緒に運んでくれる人を探しに行こうetc・・・と不必要なまでに細部を詰めていくわけだけど、それらも全て意味がない。つまり、設定全体がマクガフィン(代替可能なもの)という状況の中で、千鳥の2人の圧倒的な面白さだけがそこにある。発想も言葉も動きもどこまでもオリジナリティに溢れ刺激的。色気も愛嬌も兼ね備え向かう所、敵なしという感じだ。更にこのDVD、ラストは感動的ですらある。山の頂上でタキシードを着た大吾が白いピアノを弾く。するとその奏でる音に、海辺や川や野球場や街に佇む、(同じく正装した)人々が奏でるヴァイオリンやシンバルやサックスやフルートの音(実際は映像だけ)が重なっていく。彼らもそれぞれの場所に楽器を運んだのかもしれない。ユニゾンが距離を越える。インディー音楽好きにしかわからない例えで申し訳ないが、これはもうあの傑作DVD作品『片想い VS VIDEOMUSIC』(2010)と同じではないか!しかし、千鳥の2人はおそらくこの映像に何の意味も込めていない。



このDVDは2011年リリース。ロケ芸人として関西ローカルTVを席巻し、その後『THE MANZAI』で3度の上位入賞を見せる前、つまり最も脂の乗っていた時期に作成されている。「ポスト ダウンタウン」という響きが、一時期のブラックマヨネーズ以上にしっくりくる風格さえ感じる。この後、『ピカルの定理』が終了し、『THE MANZAI2013』ではウーマンラッシュアワーに敗れ優勝を逃す、など東京進出における負の連鎖が始まっていく。深夜にテレビを観ていたら、千鳥が先輩芸人と寺などの観光地をロケしている様子が流れていた。そこには「あの仏像、何て言うてる?」という千鳥お決まりのむちゃぶりに対して、ノブが「何も出てけぇへん」とうなだれている様子が映されていて、かなりショックを受けたものだ。だってあの千鳥である。絶対無敵だった千鳥が東京という病理に侵されてしまっている。
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しかし2014年、千鳥はついに活路を見出す。『いろはに千鳥』である。戦場を東京から少し移し、テレビ埼玉制作でのロケ番組がスタート。東京進出で得たやっとの冠が埼玉ローカル、とあらゆる場所でネタにされていた今番組。しばらく「埼玉の人うらやましなー」と指をくわえていたのですが、先日調べてみたら、ほぼ埼玉県である我が家でも視聴可能な事が判明し、シーズン4からチェックしております。で、これがまた腹がよじれるほどに面白い。やさぐれ感とほどよく肩の力が抜けた雰囲気がたまらなくマッチし、千鳥の魅力がいかんなく発揮されています。関東周辺の街をブラブラしてその土地のグルメや観光に触れる、という何の変哲もない番組概要なのだけど、千鳥ならではの、様式美の破壊と構築がなされていて、毎回腹が捩れるほどに大笑いしている。こんな番組観た事ない。関西の人はその気になれば、こんなものを年間100本も観られたのか。羨ましすぎるではないか。もう、たまらなくなってシーズン1のDVDを3本一気に購入。

ずっと観ている。夢中。もう、本当にずっと観ていたいと思わせる幸福感と中毒性があります。1巻に収録されている川越のうどん屋での芋の天麩羅のくだりとか、永遠に観ていたいくらい好きだ。視聴可能地域の方で未聴であれば、もう絶対マストでチェックして頂きたいし、DVDはレンタル(しているのかわかりませんが)と言わず、購入推奨だ。『千鳥の白いピアノを山の頂上に運ぶDVD』も3時間という長尺に加え、千鳥・ダイアンの副音声がまた最高なので、少なくとも6時間は必要になりますので、購入がオススメ。何回観ても楽しめますよ!っと。