青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

GOMES THE HITMAN“reconstruction of cobblestoneー僕たちの都市再生計画”

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時はゴオゴオと音を立てながら無情に流れ去り、二度と戻ってくる事はない。小さい頃に『ドラえもん』を読んで知ったつもりではいたのだけど、歳を重ねて、よりクッキリとその冷酷な真実を痛感している。どんなに楽しい時間を過ごしていても、その感覚はいつだってドロリと底の方に横たわわっていて、僕らをセンチメンタルな気持ちにさせてしまう。そいつとどう上手に向き合っていくか、というのは全てのボーイズ&ガールズを鼓舞する為に存在するポップミュージックの命題であると思う。例えばこの国でも20年前に小沢健二というミュージシャンによって『LIFE』というアルバムがリリースされた。

LIFE

LIFE

過剰なまでに幸福な瞬間だけを集め、「どうかこんな時間がまた訪れますように」と祈りをソウルミュージックの意匠でパッケージした、永遠のマスターピースだ。それから約5年後の2000年、GOMES THE HITMANというバンドが『cobblestone』というアルバムを発表する。当時25歳の彼らにとってのメジャーレコード会社からのセカンドアルバム。
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一世を風靡した『LIFE』に比べると、もしかたらあまり知られていないアルバムかもしれない。かく言う僕もその存在を知ったのはほんの1年前なのだ。でも、声を大にして叫びたい。この『cobblestone』というアルバムはかの名盤に負けず劣らずの、日本語で歌われたポップミュージックの至宝だ。過ぎ去りし時の流れに胸を痛める全ての人に向けられた、日々を輝かせる魔法の音楽である。


GOMES THE HITMANはこの『cobblestone』というフルアルバム、そしてその前後にリリースされた『new atlas e.p.』『maybe someday e.p.』の2枚のEPを通して、「まちづくり三部作」というプロジェクトを展開する。真っ白な地図に、架空の街を創造し、音楽でその細部を膨らませていく。その細部とは、僕らの日々の営み。ここには、恋人とのロマンスやアバンチュール、パーティーやディスコはそこにはないかもしれないが、休日に乗るバスの雰囲気や、開けた窓で揺れるカーテン、その窓から聴こえてくる街の音、自転車に乗って見える景色や夜の散歩、そういった美しさがある。本当にささやかな"LIFE"のシーケンス。過ぎ去り色褪せていってしますはずのその細部が歌となり、そしてそれが”街”して形づくられ、保存されていく。架空の街には、”思い出”がメロディとなって降り積もっていく。これで、もう寂しくはない、寂しくなったら、不安になったら、思い出が暖めてくれるだろう。安心な僕らは現実の街へと歩き出す。すると気づくはず。その現実の街にもメロディーが溢れている事に。



アルバムリリースから15年後の2015年4月25日、昨年7年ぶりにバンドを再始動させたGOMES THE HITMANが「まちづくり三部作」の完全再現ライブを敢行した。タイトルは『reconstruction of cobblestoneー僕たちの都市再生計画』だ。心から素晴らしいライブだった。改めてその楽曲の素晴らしさに酔いしれてしまう。『cobblestone』というアルバムは、音楽面においても、前作『WEEKEND』(こちらも超名盤!)
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でのジャングリーな佇まいを残したギターポップからおおいに飛躍している。所謂ネオアコ的なナイーブな感性はそのままに、メロディは大きく開け、はっぴえんど、大滝、山下と連なっていく日本のポップミュージックの連なりに肩を並べるようだ。事実、アルバムのプロデュースにはナイアガラとラインアングルの1人、杉真里がクレジットされている。『maybe someday e.p.』には、山下達郎のコーラスとしても名高い村田和人の名も確認できる。「午後の窓から」「思うことはいつも」「シネマ」少なくともこの3曲のエヴァーグリーンな響きは、永劫称賛されるべきだ。そうじゃなきゃ嘘だろう?

youtu.be
珠玉のメロディを支えるバンドの繊細なアンサンブルとアレンジも聞き物だ。また、今回のライブで改めて気づかされる事になったのだけども、グルーヴィーな演奏を記録しているアルバムでもある。ライブでの「言葉はうそつき」「北風オーケストラ」「太陽オーケトラ」の演奏には、7年ぶりの同窓会バンドではなく、現役のロックバンドとしてのGOMES THE HITMANが刻まれていた。その証左として今回はバンドとしての新曲も披露されたのだ!今後の活動に期待がもたれます。今回のライブでとびきりに痺れてしまったのは『maybe someday e.p.』の3曲だったのですが、入手困難な音源であり、手にできていないので、こちらについてはまたいつかの機会に譲りたい。


15年前にリリースされた楽曲が、なんら色褪せる事なく輝いている。その事実に、僕らの"LIFE"も終わりなく続いていくのだ、と勇気づけられる一夜となりました。