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古沢良太『デート~恋とはどんなものかしら~』6~8話

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この素晴らしさ。全話感想を綴っていくぞ!と意気込んでいた古沢良太脚本の月9ドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』ですが、気づいたら5話ですっかり頓挫しておりました。しかし、ドラマ自体は、6話から8話にかけても決して緩む事なく、素晴らしい密度で走り続けております。笑いを引き起こすアクションや細部に加えて、涙腺を刺激して止まないエモーションが1話ごとに宿りつつある。足早にはなりますが、振り返りたいと思います。


6~8話によって、この『デート~恋とはどんなものかしら~』というドラマが一貫して描いているものが浮き彫りになったように思う。幼い依子が、妻を亡くした父をこんな風して慰めた。

量子力学によると、万物はすべて粒子によってできているのよ。 つまり死とは、その人を形つくっていた粒子が気体という姿に変形することに過ぎないの。 お母さんの粒子は存在し続けるわ。 お母さんはここやそこに居続ける。

量子力学とは何であるのか1mmの理解も持たない文系の私(もしくは巧)であれば、依子の台詞をこう解釈する。誰かの事を想う、その”想い”というのは一度発生したら、決して消える事はないのだ。ちなみにこれは「月9」の金字塔、坂元裕二脚本『東京ラブストーリー』(1991)

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での赤名リカの台詞

好きは消えないんだよ

と意味合いを同じくする。好きは消えない。13年間絶縁していたと思われていた巧の母・留美風吹ジュン)と父・努(平田満)は、見えない所でしっかり繋がっていたし、佳織(国仲涼子)は20年以上、巧への想いの火を絶やさない。想いは消えない。だとすれば、この世界の大気には、誰かの誰かへの”想い”で溢れかえっているのかもしれない。なので、一度発生した”想い”は大気中をふわふわと漂い、ひょんな形で思いがけず届いたりする。時間や空間、ときには届く対象すら越えて。6話における、小夜子の再現不能だったはずの”お雑煮のレシピ”が突然、巧の手によって振る舞われ、父と依子の感情を揺さぶる。8話での、小夜子からのチョコレートが約20年の時を経て、依子の元に届き、それは彼女が”本当の恋”をする為のアイテムになる。


また、面白いのはこういった奇跡のような現象が、嘘(ex,レシピの改ざん)や勘違い(ex,留美の胃癌騒動)や妬み(ex,俊雄→巧や鷲尾→巧)といった、一見ネガティブな要素によって引き起こされる点だろう。その中で、「存在しない」と言われていた依子の”心”や、依子と巧の”ラブストーリー”が逆説的に浮かび上がってくる、脚本の構成力の妙。脱帽である。8話ラストにして、カップルのシャッフルが行われ、「後2話でどう収拾をつけるというのか!?」と関心が止まりません。古沢良太の手腕に期待しかないのです!