青春ゾンビ

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坂元裕二『問題のあるレストラン』1話

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どうやら「女性差別」という問題を大きく取り上げた作品のようだ。フジテレビ木10枠で『それでも、生きてゆく』では少年犯罪、『最高の離婚』では離婚増加といった社会的なテーマで作品を書き下してきた坂元裕二だが、その実、一貫して描いていたのは”人と人のわかりあえなさ”であった。その一方で日本テレビ水10枠においては『Mother』『Woman』といった作品で”女性”を描いてきた。この『問題のあるレストラン』は坂元ワークスにおけるその2つの大きな線が交わった作品になるのではないか、という期待がある。坂元裕二にとって最も身近に理解する事のできない(=わかりあえない)対象こそが女性であり、であるからして、彼は女性を書き続けているのではないだろうか。とにもかくにも、プロデューサーからスタッフまで、あの『最高の離婚』と同様の布陣での今作に寄せる期待は尋常ではない。


傷ついた人々はどういうわけか屋上に登る。そして、そういった人々は、そこから下に飛び降りてしまう。今作の主人公たま子(真木よう子)は、その屋上に屋根のないレストランを作るのだという。屋根がないのだから、当然寒い。しかも、ビルの下を眺めればすぐそこに、憎き男どもが経営する「シンフォニック表参道」がある。当然「こんな場所でレストランがやっていけるわけない」と回りは口々に叫ぶのだが、たま子は言う。

短所とは魅力の別名なんです!
夜の空が見えます。月も見えます。星も見えます。
こんなところで食べるご飯、もう絶対に美味しいと思いませんか?

勿論、台詞そのままを取ってもロマンティックで素晴らしいのだけども、つまりは、”下”に落ちていく現代社会の闇である屋上において、”上”を眺めてみようという提案だ。1話の冒頭で、几ハイジ(安田顕)が緑色の風船を手にして登場し、それが空に舞い上がっていった事を思い出したい。


冒頭の、特徴ある真木よう子の声で再生される

いい仕事がしたい、ただいい仕事がしたいんです。手に汗を握って息をするのも忘れるような、そんな瞬間に出合いたい。人生って地位や名誉やお金じゃない、人生はどれだけ心が震えたかで決まると思います。

というおそらく本作の核となる台詞に、手錠をかけられパトカーで護送される真木よう子の姿がかぶせられる。いきなりキレキレである。もの凄くいい事をキリっと言っている人が、思いっきり逮捕されている。笑うしかないだろう。その後も「オレがオレが詐欺」「女の嫌よ嫌よは好き、そのデータ見せてよ」「飲み会という名の無料キャバクラ」「無意識に人を傷つける人の前では、こっちが悪意をもたなきゃいけない」「amazonの箱」「ハリー・ポッターの子役」*1・・・密度の濃い台詞が早口で展開され、「坂元作品を観ている」という気持ちを満たしてくれる。冒頭の逮捕シーン以降不在のたま子。彼女と待ち合わせをした人々が屋上に集まってくる。『ゴトーを待ちながら』『桐島、部活やめるってよ』(東出昌大松岡茉優!)を意識した展開に胸が熱くなる。ミステリアスな存在の彼女が、人々の独白で、そのイメージが徐々に肉付けされていくの。剣道部という前振りから、

キル・ビル』オマージュな映像で、男性上司を切りつけていく藤村五月(菊地亜希子)の妄想を、たま子が「氷水ぶっかけ」という形で実現していく。早くも「アイスバケツチャレンジ」を揶揄って、しっかり現代を織り込んでいるのもいい。『キル・ビル』アクションのオマージュはネタ遊びではないだろう。タランティーノ作品の『キル・ビル
デス・プルーフ in グラインドハウスといった”女性の復習”を描いた映画たちが、本作に大きなインスピレーションを与えていると、推測致します。1話でこの密度。今後が楽しみで仕方ありません。

*1:ハリー・ポッターネタは『モザイク・ジャパン』でも出てきたが、坂元さん好きなのでしょうか