青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ロンリー『楽しいVoid』


ロンリーという岡山の4人組バンドの7インチ『楽しいVoid』がとてもいい。牛尾友美によるジャケットも素晴らしいです。Summer Of Fanからのリリース。ライブを観た事がないので、ロンリーというバンドの奏でる音楽がパンクなのかハードコアなのかスカムなのか把握しかねるのですが、この7インチから感じ取れるのは、彼らが最高のポップバンドであるという事です。「脱臼した」とか「ポンコツ」といった形容詞がふさわしバンドのグルーヴと音色は、しかし、どうにも的確に快感のツボを抑えている。そして、突き抜けた歌心。ジョンのサンや紙コップスなどの名古屋周辺のバンドに近しいものを感じる。脱力したコーラスもいい。何より曲がとにかくいい。うお、最高だ!と思っているとあっという間に終わってしまうショートチューンのその刹那。ミラクルポップである。


メンバーはなんだか男の子という感じでかわいい。

ロンリーの存在は、Hi,how are you?の原田君がインタビューで2013年の愛聴盤として、彼らの自主制作1stアルバム『ファーストオブ終わり』を挙げていて、「きっと素晴らしいバンドに違いないぞ」と心に留めておいたものの、すっかりそのままに。気づけば、その1stは取扱店舗で軒並みソールドアウト。入手困難となっております(2014.09現在)。再発されるまで、とりあえずこの7インチにひたすら針を落とそうと思う。これは凄い音源だ。「退屈を音にしたい」と言っていたのだが、フィッシュマンズ佐藤信治で、もちろんその音楽は素晴らしいものであったのだけど、どうにもそれはかっこよすぎるというか何というか、僕の「退屈」とはちょっと違うな、と思っていた。そこで、チャダラパー「ヒマの過ごし方」なんて曲があるのだけど、あれも名曲だけど、観念的過ぎると言いますか。「人生は退屈だ」とかそういう格好いい事ではなくて、夏休みに本当に予定がなくて、やりたい事もなくて、昼間に起きていいとも観ながらカップラーメン食って、口寂しいからアイス食って、ゲームを始めたら、気づいたら夜中の3時、みたいなそういうクソタレだけど愛おしい"退屈"を音で聞いてみたくて、それがロンリーの『楽しいVoid』なのでした。ヨレヨレながら男前なギターフレーズとニューウェーブなベースがたまらないA面1曲目の「beer」なんてこうだ。

朝 ゲロ 夏 郵便屋さん
朝 ゲロ 夏 アホ
コンビニで買った缶ビールでチアーだ

この短いセンテンスで的確に伝わってくる怠惰な美しさ。シンプルで力強いメロディーは合唱必至。酒と合唱、ゲロまみれのリアル。ロンリーは俺らのOASISかっ!?*1それはまぁ置いておくとして、このバンドのリリシストとしての才能は本物だ。A面の最後を飾る「hang over」の歌詞を見て欲しい。

ハンクオーバー の原因はテキーラ
今が良ければそれでいい的な
流れるプール ビデオ早送り
とても幸せな耳鳴り
いつかはパンパースはくからそれまで
黒のコンバース コンパス片手
このまま白い闇の中
100円ライター 夏の匂いかいだ
夜になると 行きたくなる海岸
聞いてもかけないテレフォンナンバー
名前も知らない草花
水着の女の子のインスタ
ビーサンぬいで歩く砂浜
汚ねー海だ 今年も潜るわ
夜になると 行きたくなる海岸
なんだか遠くで気の早い花火だ

素晴らしくないですか?ラッパー顔負けの巧みな韻踏み。フレーズやセンテンスに託されるイメージの広がり、そこはかとない叙情性。水着の女の子のインスト画像を、名前も知らない道端の草花と重ねて(素晴らしいセンス)、「草花」と「砂浜」で踏みながら、海に連れていってしまう鮮やかさ。


B面は表題曲「楽しいVoid」1曲のみが収録されている。鍵盤のフレージングの味付けが絶妙なポエトリー風のインナーチューン。

なんだかすごく空っぽな気分
いつになったら終わるのか
どこに行けば楽しいのか

憧れのバンド生活、最初は楽しかったが、今では退屈を覚えてしまう、という独白。こちらは「退屈」のもう1つの側面である空虚感に焦点を当てており、A面とは打って変わって、ダウナー。しかし、続くバースは

笑っていいともは終了
言いたい事だけは言うよ

と力強く、さらに続けて

go easy step lightly stay free

THE CLASHの珠玉の名フレーズをサラリと引用。神様ジョー・ストラマーが言ってる"気楽に行こうよ、自由気ままに"。そして、楽曲は

そんでsix packガリガリ君買って帰宅するのだ

というフレーズで締められる。この軽やかさ。これはちょっと最高過ぎるのでは。まさに”楽しいVoid(空虚感)”だ。ゼロ年代に「空洞です」と言った人がいたけども、まさか、そこに”楽しい”をくっつける人達が出てくるなんて。「地方都市」というタームを抜きに彼らを語るのは正しくないのかもしれないが、できない事はやめておこう。とりあえず、最高とだけ記しておこう。一部の方はたまらなく好きだと思うので、未聴の方はぜひ!

*1:勿論、音は似ていないのであしからず。そういった意味での日本のOASISは柏原兄弟によるNo’whrerだ!誰だよそれ、ってチビっ子達はお兄さんやお姉さんに聞くか、検索してみよう