青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

たむらまさき『ドライブイン蒲生』


日本映画界を代表するカメラマンたむらまさきが75歳にしてまさかの監督デビュー。たむらまさきのカメラワークで個人的に馴染み深いのは、相米慎二『ションベン・ライダー』、青山真治の”北九州サーガー”三部作、そして何より鈴木卓爾私は猫ストーカー』『ゲゲゲの女房』の2本だ。カメラが強い意志を持って、映画を躍動させているように感じさせてくれた作品である。そんな、たむらまさきの初監督作品は、鈴木卓爾の作品群と同様に制作がスローラナー、更に脚本も同じく鈴木作品の『ゲゲゲの女房』『楽隊のうさぎ』の大石三知子という安心の布陣。原作は同名の伊藤たかみの小説、そして音楽はdipヤマジカズヒデが担当している。


一部の映画ファンには「雰囲気長回し映画」などと揶揄されるかもしれない。しかし、今作はっきりと素晴らしい。その理由は、今作を貫く「途中」の感覚だろう。我々は常に何かの途中に”在る”、という世界の捉え方だ。主な舞台となる父(永瀬正敏)が国道沿いで経営している「ドライブイン蒲生」という古びれた食堂が、まさに象徴的。ドライブインというは、出発点から目的地への途中に寄る空間である。そういった空間に目的もなくウダウダとたむろする主人公の姉(黒川芽以)と弟(染谷将太)が、長回しの中でインとしり、アウトしたりする。そして、あの素晴らしきダンスシーンでの染谷将太フレームアウト。そして、終盤でインしてくる染谷の身体の生々しさ(目は死んでるのに)。

何の目的もなさそうな彼らもまた、常に何かの途中であるという事が撮られている。そして、あらゆるシークエンスが途中で始まり、途中で終わる。始まりと終わりを、そぎ落とされると、役者たちは、魅力的にそこに在り続けるように見える。


ヤマジカズヒデのギターもいい。録音もいい。「ドライブイン蒲生」では永続的に国道に響く車の走行音が鳴っている。光もいい。太陽が雲に隠れると、光が薄れ、空間が変容する。そんな当たり前の事、しかし、映画においてはなかなか映される事のない貴重な瞬間が、捉えられている。季節外れの駐車場での花火も、感情的に撮るではなく、ただただ空間と光の関係性として美しく捉える。退屈に感じてしまう所も少ないはないのだが、役者の強度(黒田大輔や吉岡睦雄、そして子役の平澤宏々路も素晴らしい)と空間の生々しい捉え方で、大いに楽しんだ。