さくらももこ『神のちから』
- 作者: さくらももこ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1992/06
- メディア: 単行本
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理容室から出ると頭が瀬戸物になっていた青年の話、饅頭屋とインコが徐々に入れ替わっていく話、誰も死んでいないのに葬式をする一家の話、西山という部下がどんどん増殖していく話etc・・・「神のちから」という不明瞭な言葉が全編を見えない力で支配している。その中において、人間はどこまでもバカバカしく、くだらなく、ちっぽけな存在だ。しかし、本作の中で人間は確かに活き活きと在る。
中でも出色は、上司が送って来た男「ヤマモト」を床の間に飾り嗜む「おくれてきたひと」か。これはラーメンズの「現代片桐概論」を彷彿とさせる。また「それていくかいわ」での見事なイリュージョン会話劇は、『談志・円鏡 歌謡合戦』に影響を感じる。ちなみに、談志の孫弟子にあたる立川春吾はこの「それていくかいわ」経由で、イリュージョン会話劇を新作落語『クロコダイルとヒポポタマス』として実践している。あぁ、偉大なり、さくらももこ。彼女のイリュージョン漫画へのカムバックを心から待ち望んでいる。