青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『五反田怪団ザ・ベスト』

アトリエヘリコプターで『五反田怪団ザ・ベスト』を観てきた。ベスト版なのでこれまでの公演の中でも印象に残っている話が多い。ザ・ベスト・オブ五反田怪団にふさわしい前田司郎の「ラブホテルの幽霊」は何度でも聞きたい怪談。オチのドライブ感には何度目だろうと大きな声を上げて笑ってしまう。海と車。日焼け止めクリームとクーラーの匂い。国道、ファミレス、ラブホテル。これだけ揃っていれば、学生時代に仲間で海に行った事があろうがなかろうが、青春が蘇ってくるというものです。怪談と猥談を揺らぎながら繰り広げられる男女のセックスを巡る攻防戦。前田が脚本を担当した沖田修一『横道世之介』のお風呂での会話を思い出す。池松亮ニの「いや、ほんとに本棚からキスなんだよ、マジカルなんだって」というあの素晴らしきマインド。あの感じが漂っているので、猥談も下世話さを感じさせない。前田司郎の描く男女の物語には、強い自意識の葛藤と共にいつも確かな身体性が貫かれていて好きだ。前田司郎は言う。怪談は、人間の哀しさを浮き彫りにする芸術だ、と。逃れられない死、生きるということの矛盾。そんな壮大な前フリで始まる青春のセックスと自意識の卑談。最高ではないか。ラストに待ち受ける吉田さんの裸踊りを観ると「あぁ、今年も暑い季節がやってくるぞ」と思える夏の風物詩である。今年はこの『五反田怪団ザ・ベスト』だけなのかと思って、多くのお客さんが会場に駆けつけていましたが、8月に『五反田怪団2014』やるらしいです。騙された。でも絶対行きます。