青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

クリス・バック/ジェニファー・リー『アナと雪の女王』


大ヒットも納得の傑作。受け身であったプリンセスが、近年は男性に頼り切らず主体的に道を切り開いている。と言った近年のディズニープリンセスへの賞賛にはあまり興味がない。そんな外的な理由であの素晴らしき『白雪姫』や『眠れる森の美女』を駄作としてしまうのはあまりにナンセンスだと思うのだ。そういうった要素以外にも『アナと雪の女王』という映画は魅力的な点に溢れている。


池の表面にノコギリの刃を入れ、氷を取り出す。冒頭で描かれるその上下の運動性に映画は終始忠実に従い、画面を構築していく。それは降り続ける雪だとか山とか塔とか階段とか氷柱などといった風景構成だけでなく、駆け上げる、滑り落ちる、ジャンプする、落下する、といったシンプルながら魅力的なアクションを誘発し、画面を躍動させている。端的に言ってしまえば、この作品は、凍った氷を溶かす話なのだけど、映像的としては降り積もったものを再び舞い上がらせる物語として描かれている。「扉や窓を開ける・閉める」という運動をテーマにわかりやすく織り込んでいるのもシンプルでいい。おそらく、この作品で20回に近い回数、扉や窓が開け閉めされているだろう。それは開かれれば必ずポジティブな方向に進んでいく、という作品の中の法則性がいい。そして、歌である。「レット・イット・ゴー」のみならず「雪だるま作ろう」「生まれてはじめて」どれも最高。計算し尽くされた画面に収まっていくのでなく、縦横無尽に歌が駆け巡り、画を拡張していく。まるで歌が画を動かしているのかのような感覚。ディズニーアニメーションが元来持ち得ていた快楽性は3Dアニメになろうとも健在なのである。ラスト、エリサが忌み嫌っていた魔法を空に舞い上がらせ、立ち上がるスケートリンク!たまらなくいい。グルグル回る人々と、上昇していくカメラ。スケートリンク 君と僕と笑う。”たぶんこのまま素敵な日々がずっと続くんだよ”って感じだ。*1


あ、後オラフいいですよね。*2夏に憧れる雪だるま。そうそう、「夏を取り戻す旅」というモチーフも詩的でいいのだ。ちなみに3D字幕と2D吹替で観ましたが、劇場の問題なのか、3Dは画面が暗過ぎて2Dのが断然よかったです。吹替えの方が台詞の情報量が多く、人物造詣が圧倒的に豊かですが、歌は吹替版の本家にやや軍配が上がるという印象です。松たか子と神田沙也加も素晴らしかったんですけどね。ここ数年ディズニー映画の感想の度に書いているが、『プリンセスと魔法のキス』(2009)から5作品連続(『塔の上のラプンツェル』『くまのプーさん』『シュガー・ラッシュ』)で外れなしである。この充実度は90年代周辺の『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ライオン・キング』といったディズニールネッサンス期にも劣らぬと言いますか、個人的な感触としては優っております。

*1:これがボリス・ヴィアンだと人がいっぱい死んじゃうわけですが。

*2:吹替版だと声優はピエール瀧電気グルーヴの時より歌ってます