青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

スカート『ニュー・グッド・タイム・ミュージック』


スカートの弾き語り音源を収録したCD-R『ニュー・グッド・タイム・ミュージック』を聞きながら家路についていたおり、アルバムの最後のナンバー「月の器」という曲に「わっ!」と感動させられてしまった。初期音源集『Lovers Chronicles』 にも収録されていて、好きな楽曲だったのだけど、歌とギターのみの弾き語りで聞くと驚くほどに言葉が迫ってきたのだ。

給水塔へのぼって 暗い街を見渡せば
背の低い建物が いつもよりよく見える
終電車の灯り 川面に火を点し
乾いた空気の所為で 街灯に燃え移る

素晴らしい。まるで漫画のようだ。風景が浮かび、イメージが飛んでいく。高低と明暗とがベクトルを行き来し、視界がサーッと広がっていく。Aメロだけで、町田洋の短編を1編読んだような充足感が得られてしまう。

夜とコンクリート

夜とコンクリート

僕はいつもひどく漫画に憧れていて、
コマ割のようにコードチェンジしたい、と考えています

という澤部氏の名言を改めて想ってしまう。いやはや、これを10代で書いてしまったなんて、本当に恐るべき才能だ。このアルバム、澤部君のボーカルはこんなにもメロウだったか、という気づきがある。珈琲とか街灯とかラジオとか。そして、ギターと口笛と親密さ。ベッドルームから愛を込めて。「ニュー・グッド・タイム・ミュージック」なる宣言も力強く大胆でナイスだ。