青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

アナ『イメージと出来事』

検索しづらいバンド名ランキング上位入賞常連のアナ*1の3年ぶり5枚目のニューアルバムがリリースされた。

イメージと出来事

イメージと出来事

音像が変化している。これまでのアナは簡単に言ってしまえば、小沢健二のソウルやスチャダラパーの遊び心を志向しながらも、あくまでインディーポップだった。前作『HOLE』に顕著なのだけど、シンセの音色や四つ打ちのキックを磨き上げ、海外のインディーシーン、クラブシーンとの共鳴に躍起になっていた。素晴らしいメロディーと言葉を持ちながらも、どこかその器(サウンド)が借物のようで、個人的には歯がゆい想いをしていたわけなのだけど、ドラムの脱退を機に、生音主体の管弦交えた流麗なポップソング作家にモードをチェンジし、いよいよそのソングライティングの才能にふさわしい器を手に入れたという感じがいたします。と言うよりついに向き合った、と言える1枚。大歓迎の方向転換。

アナの特徴である古今東西の音楽、とりわけソフトロック、ソウル、ブラジル音楽をスムースに消化した渋谷系の感性はそのままに、今作ではかつてこの国の歌謡曲が持っていた甘美なメロウとロマンを現代に蘇らせている。日本語が美しくメロディに乗っている。「晴れた大通りを歩いているのかもしれないけど」「本当の事ばかり知りたがる空模様の予言者達」「神様よりは側にいる君のこと思ったりするよ」「ふらふら風来坊さ」だとか無邪気な引用やオマージュも健在。何気ない日常のシーンを切り取る手腕が見事で、一瞬を永遠に保存するポップソングの魔法を見事に体現している。アルバムを一貫して流れているのは、これまでのアナと同様に(それは小沢健二のソウルマナーの継承でもあるのだろうけど)「どうか過ぎていく時を悲しまないで欲しい」という祈りだ。


楽曲は実に粒揃いで、とりわけ「コピーのように」「長いお別れ」「ハイライト」の3曲が出色の出来だろう。個人的にはレイモンド・チャンドラー小坂忠の「しらけちまうぜ」を彷彿とさせるハードボイルドな強がりがバカラックにもひけをとらないであろうメロディーとサウンドで紡がれる「長いお別れ」が本当に本当に大好きでもう何篇も繰り返し聞いている。ドラム脱退を経て2人組になったからというわけではないが往年のキリンジを彷彿とさせる楽曲の充実度ではないかしら。大久保の鼻声ボーカルのチャームさで本格派になりきっていない所が好みの別れる所でしょうか。数曲で参加しているYeYeやアニス&ラカンカらナイスな人選の女性ボーカリストの参加もいい塩梅で、大久保潤也のソングライター職業作家としての未来も見える。早くもアナの次の一手が楽しみだ。

*1:この数カ月後にまさかの『アナと雪の女王』大旋風が巻き起こり、さらに上位に食い込むことになるとは