青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

『かもめんたると巨匠のトークライブ』in阿佐ヶ谷ロフトA

阿佐ヶ谷ロフトAにて『かもめんたると巨匠のトークライブ』を目撃。独特の世界観を突き詰めるコント師の夢の共演。至福の3時間。そして、実に奇妙なトークライブでありました。トーク中、プライベートに関わる事を質問されるやいなや激昂して退場してしまう巨匠本田。飲み物に何か仕込まれていたらしく、1人、また1人と眠りについていき、最終的に壇上の4人全員が机に突っ伏し、お客を放置する数分間。「性の目覚め」というトークテーマが発表される共に訪れるささやかな停電。ライブの締めの挨拶が始めると、まるでステージ上だけが時間軸の流れが狂ってしまったかのようにスローモーションで動き喋る4人。そして、その度に上がる「ドッキリ大成功」のプラカード。たとえ、陳腐なドッキリであろうと、繰り返される事で、現実と嘘の境界は曖昧になっていく面白さ。白眉は、ひたすら”嘘”を喋り続けようという20分間のインプロトーク。「昨日のこの時間何してた?」「田植えしてました」「えぇ、こんな夜中に?」「植える時に日光に当てないほうが甘いお米ができるんですよ」・・・・といった風にひたすらでたらめな話を続けていく。この自由な即興性がスリリングかつイマジナティブで、たまらないものがあった。永遠に聞いていられる感じ。といった風にトークライブであろうと、道化のように虚構を演出していく4人は、「コント師、ここにあり」という感じ。素の人間力で勝負する漫才師とは違うというか、ありのままを晒す事への照れのようなものも感じる。


勿論、ずっと変な事をしているわけではなく、全うにトークライブとしても楽しい。かもめんたるのトークは頭の良さが滲み出ているというか、道筋がはっきりと整理されていて聞きやすい。
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それを受ける巨匠の2人の絶妙な後輩感というかかわい気というか、そのバランスもよかった。巨匠にシンパシーを感じていたというかもめんたる岩崎う大が、巨匠の席替えのネタを例に挙げて、構造や作り方を質問、解説していく様などは、「こんな贅沢なものを聞いていいのだろうか!」と口角が上がりっぱなしでした。


トークライブではお馴染みの幼少期の想い出を振り返るコーナーも秀逸だった。小さい頃の不思議な体験や印象的だった出来事を、オチなど作らないでいいからひたすら積み上げていく事で、現在のクリエイティブのルーツを探ろうという事で、珍妙なエピソードがどんどんシームレスに繋ぎ合わされていく。これまた、定番の親や兄弟の性行為を目撃してしまった、という題材も、う大さんにかかるとこうだ。夢の中で執拗に念仏が聞こえてくるので、目を覚ますと、まだ聞こえる。なんと、それは母の喘ぎ声だった。息をひそめて寝たふりをするう大さん。行われている行為が何かはわからないが、”子どもを産む為”のもの、というのはうっすらと認識していたのだという。すると隣で寝ている弟が歯ぎしりを始める。「歯ぎしり」という概念がまだなかったう大さんはその音が、卵が割れていく音に聞こえたそうです。生命の誕生すら語りあげるあまりにアクロバティックな下ネタである。あまりそういう印象を世間からは持たれていないようだけども、かもめんたるのトークは面白い。特にう大さんの、人間の弱みや臭みを目ざとく指摘していく、グロさと笑いを両立させたエンターテイメント性は、いつの日かブラウン管でも炸裂してくれるだろうと期待して止みません。ライブ終了後は、蝋人形になった4人が固まったままお客さんをお見送り。おそらく今回のライブの全体のプロデュースはう大さんだった想うのだけど、どこまでも、虚構を愛し、どこまでも照れ屋な人だ、と思いました。