青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

キングオブコント2014

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シソンヌ、おめでとうございます。圧倒的な演技力に裏打ちされたドラマの推進力と細部にまで神経の行き渡ったセリフ回しと設定の数々。文句なしの優勝ではないでしょうか。この日披露したコントは8月の傑作公演『deux』からの2本。1本目のラーメン屋のコントの後に、タクシー運転手に着替えた長谷川忍の姿を確認して、驚いた。あの2本は単独公演では続きで演じられたコントで、まぁ、言うまでもないが、ラーメン屋のコントのラストでオヤジが轢かれるのが、あのタクシーによってなのである。勿論、じろうのクオリティの高い女装キャラ(優勝決定後も”女“である事を辞めないじろうさんにゾクっときた)という彼らの大きな商品価値の1つをお茶の間に披露しようという試みも無くはないのだろう。しかし、あの突発的で不条理な”死”で繋がった2つのコントを、1本目とどれだけ間が空くかも計算できないにも関わらず、賞レースで続けてかける事にこだわった”美学”のようなものに痺れてしまいました。そもそもシソンヌには「何をしゃべっているのか分からない男の子のシリーズ」という芸人審査の大会では勝利間違いなしの強烈なコントも数本持ち合わせていて、それを温存しての優勝なのだ。おそるべし。とりあえずご褒美に『deux』のDVD化お願いしたい。1試合目、シソンヌVS巨匠が、個人的には決勝戦でありハイライトだった。「パチンコ浸りのオジサン」というモチーフでかぶり、奇妙に世界観を共有した、名勝負。巨匠にはぜひ勝ち上がって、決勝の舞台で「万物の祖」を披露して欲しかったが、充分に爪痕を残したであろうし、あの借金王の才能が松本人志を確かに唸らせている姿は、涙腺を刺激しました。ちなみに、2組共に前王者かもめんたる岩崎う大の一押しコンビであり、来月には『かもめんたると巨匠のトークライブ』の開催も決定している。


ラバーガールは最近の単独公演の充実を想うと、やや不満が残るネタのチョイス。『キングオブコント』に限らず、賞レースだといつも置きにいったネタを選択するのは何故だろう。いや、充分に面白いのだけど。1本目とか練りに練られたソツのなさに痺れてしまった。ラバーガールいつ観ても同じだな、という人にこそ、「solo live」シリーズを観て頂きたい。『GMAE』と『T/V』どちらも傑作です。さらば青春の光、もう1本観たかった。今回のネタがバンビーノの「ダンシング・フィッソン」に負けたのは納得だ。下ネタだから、とかではなく単純に弱かった。さらば青春の光のコントは、シチュエーション1発勝負で、実はたいした事は言っていない。ミニマルに繰り返していく展開が多い。のだけども、森田が発するだけで、信じられないほど面白くなるあの不思議。マジカルボイスである。森田哲也という才能をテレビ界は求めていると思うのだけど。アキナは初めて観た。カーディガンの袖をまくる、穴に手をつっこむ、後、「とれへん」の音にだけ特化してくれたらもっと好きだった気がする。かもめんたるのように人間の心を切り込むにはちょっと弱かったような。余談だが、坊主の山名の洋服の似合い方凄い。緑のカーディガンと白い無地Tシャツ、ベージュのチノパンに茶の革靴。足を組んで文庫本を読む所作素敵。チョコレートプラネットの1本目は本当に素晴らしくて、「わーいいネタだなー」と感動することしきり。アルコ&ピースの得意な手法だけど、ちょっと細部の豊かさのレベルが違った。2本目もおもしろかったけど、あくまで陣内智則だった。とにかく、今年の『キングオブコント』は面白かった。どの組にも光が当たっていた。