青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

シソンヌ『une』


面白かった。このコンビの実力と人気は今後も更に高まっていくに違いありません。いい意味でよしもとらしくない演劇寄りのお洒落コント。チラシ、音楽、衣装、プロジェクションマッピングなどの演出からも強い美学を感じさせる。そして、あえてそのお洒落系の枠に納まらんとするように下品なおバカコントを織り交ぜるハイブリット感も強みだろう。比較としてシティーボーイズラーメンズTHE GEESEの名が挙がるが、大きな違いは長谷川忍が常にツッコミとして存在し続ける、あくまで「お笑い」である事にこだわっている点だろうか。長谷川のツッコミのキレ、ワード、タイミング、アクションはさまぁ〜ず三村、サンドウィッチマン伊達など東の剛腕の系譜だ。そして、何より特筆すべきは2人の(特にじろう氏の)高い演技力。変幻自在。女装、オタク、ヤンキーetc・・・といったオーソドックスな仮装を一歩先の領域に持っていき、説得力を帯びさせている。しかし、個人的にはじろうの憑依系のコントよりも、担任を引き継ぐ教師2人の会話劇「職員室」や洋服を汚していい飲食店という設定のセンス一発で勝負した「カレーうどん」などが俄然好みだ。「職員質」での会話が進むにつれ平凡と違和感がヌメヌメと逆転していく様はスリリングかつ快感。「カレーうどん」の欲求の資本化、そして食欲と性欲のリンクをヒラリと魅せるセンスには藤子F不二雄のSF短編集さえ想起した。


幅広いネタのレンジはさすがだが、個人的には好みから外れるネタも多くて、少し退屈してしまう瞬間もあった(シソンヌは日常から飛んでしまうと一気にキレを失くす、という印象)。しかし、それが単独公演というものでしょう。シソンヌの今後を見守りたい。