青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

森崎東『喜劇 特出しヒモ天国』


森崎東が松竹を離れ東映で撮影した1975年の作品。大傑作!!なんでこの人の映画はこんなにエネルギッシュなんだろう。松竹時代の作品以上に下品、猥雑、反倫理といった言葉を連ねたくなるが、同時にその生命讃歌っぷりにも磨きがかかっている。京都のストリップ小屋を舞台にした一大狂騒曲。ゲラゲラ笑い、多いに泣かされる。アル中、聾唖者、デブ、シングルマザー、ホームレス、ニューハーフ・・・あらゆるマイノリティが一同に介して、真っ裸になりダンスでもって、社会に抵抗する。とりわけ、アル中を演じる芹明香の柔らかい身体のダンスは枠組みから脱臼したような不思議な肉体性でウットリしてしまう。性を売り物にしているとも言えるのだけども、同じく社会からのはみ出し者と言った風貌の男性陣を喜ばす為に踊る彼女達にはある種の美学が漂っており、どうにも美しい。その姿はまるで革命家のようでもある。そして、森崎東はフィルムに「死」と「生」を刻み、そんな彼女達に「OK、大丈夫だ」と未来を肯定する。


余談。この『喜劇 特出しヒモ天国』はまるでジャネル・モネイそのものではないか、と思った。ジャネル・モネイとは歌とダンスで、多くのマイノリティー達、とりわけ女性をセクシャリティから解放する現代アメリカのポップアイコン。

彼女のパフォーマンスもどうしたって人々の涙のを絞り取る。いくらカルチャーに造詣の深い彼女とは言え、よもや彼女が森崎東の今作を観ているという事はないだろうけども、必ず気に入るだろうな、と思うのです。少なくともジャネルファンは必見!