青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『五反田の朝焼け』


本公演とは別枠での劇団員総出演の公演。まさかの2年前の劇団員公演『五反田の夜』の続編である。もちろん今作から観ても何ら問題なし。劇団側でも「軽い感じ」「学芸会」と必死にハードルを下げていたのだけども、いやはや傑作ではないか。五反田団のように脱臼した演劇をやりたい劇団は数多あるのだろうけども、あのグルーヴ感はやっぱり唯一無二で、誰も真似できまい。


戯曲のメインとなるのは、被災地に鶴を折るボランティアを続ける「五反田絆の会」と7年後の東京オリンピックに向けておもてなしの精神に磨きかける「おもてなしの会」の抗争。アクチャルな事象をおちょくりつつ、並行して、五反田に発生しているミニマムで歪な愛の物語を、身体の確かさでもって描くことで、社会に拮抗している。前田司郎と宮部純子が魅せるラブシーンの歪さと身体性は屈指の出来栄え。笑いながらグッときました。前田司郎の発話や身体のノイズを軽やかに放出する技術の素晴らしさは何度観ても興奮する。地べたを這いずり回りながら泣くシークエンスの鮮やかさときたら。男の子が永遠に持ち続ける(べき)童貞マインドの描き方も完璧だ。特に好きだったのは、”ジュンコさん”って呼んでいると、「ジュンコさん、ジュンコさん、ジュンコさん」→「こさん、こさん、こさん」って落語家の「柳家小さん」が頭に浮かんできてしまってよくないので”ジュンコ”って呼んでいい?というまわりくどさ。なんていう情けなさ、そしてイメージの跳躍だろうか。前田司郎と後藤飛鳥姉弟の絡みもよかった。後藤さんみたいなお姉ちゃんが欲しい。西田麻耶も相変わらず素晴らしきモンスター。「もてなされるのは好きだけど、もてなすのは嫌!」というパンチライン。今回の公演、「学芸会」を掲げただけあって、演技のメソッドに「幼児性」というのが蔓延していた。それをジワジワと多幸感に変換させてしまうのが五反田団の凄い所だ。場面転換もユルユルなのだけど、アイデアに満ちていて刺激的。アンドロイド山田も登場します。演劇はかくも自由で愉快だ。