青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『五反田怪団2013』


ここ数年は7月や8月上旬に開催されていたのだけど、今年は8月になっても情報が出てこないので、てっきり中止かと寂しく思っていたのだけど、無事開催されました。昨年は、年々動員が減っているとボヤいておりましたが、今年は席も増加されギュウギュウの大入り。いやー今年も面白かった。『五反田怪団』に足を運ぶ目的は主催である天才・前田司郎の話術を堪能する事に他なりません。毎年素晴らしい怪談を披露してくれるわけですが、今年も出色の出来栄え。怪談と猥談(ラブホテルでの男女の攻防戦)の間でユラユラと揺れながら、というよりもほとんど猥談でキープしながら、それでいて品を損なわない絶妙のトークスキルでもって風景を立ち上げて行き、オチで再び怪談にガッと落とし込む。このドライブ感が凄い。相手の話を聞く、受けの技術も素晴らしく、相槌やリアクションの一言、誘い笑い、など全てがナチュラルに完璧だ。


今回は構成も凝っていて、『五反田怪団2011』の公演中において、不慮に事故による発狂の末、正気と狂気の狭間を行き来しているという立蔵葉子が眠ったまま出演。まるでこの公演全体が彼女の夢なのではないか、という不思議空間に仕上がっており、「正気と狂気」「現実と夢と」とかいったものの境界の曖昧性を裏テーマに忍びこませていた。音や光の演出もミニマルながらどんどん研ぎ澄まされていて、なんだかどんどん進化しているぞ『五反田怪団』は。オカルト探偵である吉田悠軌の話も今回ピカイチに怖かった。サンプルの奥田洋平が熱演で魅せた客席を巻き込んだ結界の張り方も脳内が揺らめくような体験。ハイバイ坂口辰平と師岡宏明の名バイプレイヤーぷりも堪能。青年団の木引優子と荻野友里はいつも美しい。ラストは恒例の取材旅行の体験を全員で語る4、50分かけたロング怪談。あの何とも言えない大人の修学旅行感がたまらなく好き。今回のラスト怪談は、(わりといつもですが)過疎の村の土着的な風習をテーマにしたもので、すっごく怖い。諸星大二郎の世界と言いますか。比較的最近の漫画で言えば柏木ハルコの『花園メリーゴーランド』的と言いますか、そんな味付けで、見事な仕上がり。約2時間半で2000円、抜群のコストパフォーマンスを誇る『五反田怪団』、未見の方はぜひ来年こそはオススメです。