青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ロバート・A・ハインライン『夏への扉』

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)

彼は、その人間用のドアの少なくともどれか一つが、夏に通じているという固い信念を持っていたのである。これは、彼がこの欲求を起こす都度、ぼくが十一箇所のドアを一つずつ彼について回って、彼が納得するまでドアをあけておき、さらに次のドアを試みるという巡礼の旅を続けなければならぬことを意味する。<中略>だが彼は、どんなにこれを繰り返そうと、夏への扉を探すのを、決して諦めようとはしなかった。

この文章に、SFの美しさが全て込められているような気がする。この美しさは、『夏への扉』刊行の13年後、日本の漫画家である藤子・F・不二雄が”猫”と”ドア”にセンス・オブ・ワンダーを託したように、脈々と受け継がれていくものなのだろう。このポジティブなヴァイヴに溢れるイマジネーション、いつまでも身体に染み込ませておきたい。