青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

坂元裕二『Woman』1〜3話


『Woman』は『Mother』(2010)からスタッフを引き継いで制作されている。『Mother』と『Woman』、奇しくも2作共にジョン・レノンの代表的楽曲のタイトルである。これは意図的なのではないかと思う。ジョン・レノンがそうしたように、この2本のドラマは坂元裕二が根本に抱える女性観、その喪失と再生の独白のようなものなのかもしれない。


坂元脚本の『東京ラブストーリー』や『最高の離婚』の終盤においても重要なモチーフとして描かれていた”電車”が、今作では初回から頻出する。電車または列車は、映画史においてもイコールで結んでしまってもいいほど、重要なモチーフ。映画評論家の蓮實重彦がこんな言葉を残している。

映画作家路面電車を撮れる人と撮れない人と二分される

演出の水田伸行のことはとりあえず置いておこう。ここで重要なのは坂元裕二が「路面電車」を書ける作家である、ということだ。坂元裕二のペンは、テレビドラマの枠を越え、断片やモチーフで物語を描く領域に突入しつつある。『Woman』において列車は、小春(満島ひかり)と信(小栗旬)の出会いの場、そして、家族の出発の場所だ。

出会いのきっかけは「遠き山に日は落ちて」の鼻歌つまりは”音”であり、そこから”まどいせん”という”家族”のモチーフへと繋がっていく。このイメージの連なり。また、列車は『Woman』において信の命を奪ってもいる。そして、小春ら家族3人の劣悪な住環境に、追い打ちるように騒音を振りまいて列車は走る。すなわち”喪失”の象徴のようでもある。つまり、列車は「生」と「死」を運ぶ。さて、坂元裕二の列車は果たしてどこに辿り着くのだろう。


3話にしていよいよ、お得意の“すれ違い”の文法にギアがかかってきており、グンと面白くなってきている。いつくかの謎も視聴者を掴むフックとなっている。「”好き”は消えないんだよ」という台詞や”素麺”に“掴み合い”など、過去作のモチーフもふんだんに飛び出す。2話の段階では、小春が骨髄性の白血病であるかのような描写も飛び出している。おそらく、上杉紗千(田中裕子)か上杉栞(二階堂ふみ)の骨髄を移植してどうにかなるのだろう。注目したいのは『Mother』において田中裕子が演じた望月葉菜もまた骨髄性白血病で亡くなっている、という点だ。やはり坂元裕二は作品間の枠を超えて、”何か”を描き出そうとしている気がしてならない。