青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ザ・なつやすみバンド『サマーゾンビー』

ザ・なつやすみバンドのシングル『サマーゾンビー』がついにリリース。

往年の90年代J-POPに想いを馳せたという8cmの短冊シングルでの発売。安心のダウンロードコード付きです。その今や特別なフォーマットは手元に置きたくなる事必至。そして、更にその所有欲をそそってくるホラー&キュートなジャケットはイラストと題字がAlfred Beach Sandal北里彰久(多才!)、デザインがお馴染み惣田紗希先生という布陣。ビートルズよろしく赤盤、青盤の2パターンでの発売で、思わず2枚ゲット!も可能な1枚735円。TNBレコード、今回もお値段勉強して頂いております。



表題曲の「サマーゾンビー」ですが、実はかれこれ2年以上前から存在し、ライブでは披露されていたナンバー。『TNB!』の収録曲リストを見せてもらった時も、真っ先に「なんで、サマーゾンビー入ってないんですか!?」と尋ねてしまうほどに、当時から心打ち抜くピッカピカのキラーチューンでした。前述の問いには「サマーゾンビーはシングルで出そうと思っているんだよねぇ」という回答だったわけですが、今か今かと待ち望み、ついにリリースされたのですね。それくらいとっておきの1曲。何故とっておきか?ザ・なつやすみバンドが「夏」というテーマに、また

毎日がなつやすみだったらいいのになぁ

というバンドのスローガンに即したナンバーを奏でるというのは実は珍しいからなのです。そのバンド名からリスナーが思い描くであろうイメージにバンドが真っ向から勝負を挑んだ楽曲と言えるのではないでしょうか。冒頭の「せーの!」の子供達の声でもって一気に僕らをあの夢のような「なつやすみ」に引き戻し、またスティールパンのトロピカルな音色がそれを盛り上げます。しかし、さすが、一筋縄ではいきません。曲の中盤ではジョージ・A・ロメロ先生を召喚し、街にゾンビーを溢れさせてしまいます。

たとえば街がゾンビーで あふれ返っても大丈夫
ショッピングモールで暮らしましょう 平和な世界を夢見ましょう

大事なこと ぜんぶ ここに置いて
逃げ出したいよ

ショッピングモールはロメロの『ゾンビ』

において、人間達の束の間の桃源郷として登場する。つまりこれは、ユートピアを夢見る現実逃避ナンバーではないかしら。「夏休み」という刹那の代名詞を名前に掲げたバンドのアイデンティティが、3分間だけ夢を見させるポップソングというフォーマットに結実している。「夏休み」が終わってしまう事を受け入れられない「サマーゾンビー」の逃避を肯定する、いや、「2回も抱きしめちゃう」この優しさは、ポップソングのあるべき姿ではないだろうか。

君が巻き起こした大事件は
ニュースにのって 世界をかけめぐるんだよ

というフレーズもまさにポップソング、ヒットナンバーである事への自己言及のようです。なんせ舞台は資本主義の象徴ショッピングモールだ。売れろー。

しかし、改めて素晴らしい。「せーの!」で始まってからの3分ちょっと、1秒も余すとろこなく全編がフックと言えます。ドラム、シンセベースの一音一音に至るまでポップ!後、歌詞の「だよ」語尾が超ミソですよね。バンドの魅力を余す所なく伝えてくれる録音、ミックスはceroでお馴染の得能直也。間違いなくキャリアハイの音に仕上がっております。特にドラムとボーカルが見事にパッケージされていて、最高。そして、カップリングの「echo」もまた素晴らしいのだ。MC.sirafu氏曰く「両A面のつもり」との事です。以前書いた「ギター楽曲にはのりきれていない」という私の発言を取り消したい。プログレッシブなアシッドフォークをJ-POPで解釈したようなザ・なつやすみバンドにしか表現できない凄まじい楽曲です。連れていってくれる飛距離はバンド史上1ではないでしょうか。バンドの両側面が全開となっている超名盤シングル、マストバイでございます!