青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

サンリオ帝国のキャラクターをふりかえる

先日、初めてサンリオピューロランドに行ってきました。園内にいるキャラクターやグッズを見ていると、どれも知っているキャラばかりで、歴史のわりにキャラクター戦略は少数精鋭なんだなと感心していたのですが、公式サイトで調べてみると、とんでもない!誰もが知っている"ハローキティ"やら"マイメロディ"やら"リトルツインスターズ"らは無数の報われないキャラクターの屍の上に成り立ったスター集団だったんだ、と興奮しております。「あ、これもサンリオだったんだ」という驚きも多かったので、軽くふりかえってみたい。


記念すべき最初のキャラクターは1973年の"コロちゃん"である。

「おなかがすいた時は、ほっぺのコロッケをたべちゃうよ」という設定が抜群に巧い。「え、食べちゃった後はどうやってコロッケをほっぺに再補充するのだろう!?」という疑問がキャラクターに奥行きを与えていますね。その翌年1974年にはスーパーエース"ハローキティ"が早くも登場。

1975年に"マイメロディ"と"リトルツインスターズ"が登場。

なんと驚くべき事に、三大スターはその歴史わずか3年で出揃っていたのである!クリエイティブ面での絶頂は間違いなくこのここ。この年はサンリオが発行する「いちご新聞」のモチーフとなった"いちごの王さま"という重要なキャラクターが誕生しているのも見逃せないだろう。

1975、76年に登場している"パティ&ジミー"と"ボーイ&ガール"はとてもいい。

完成度の高い"パティ&ジミー"の登場の翌年に、よりミニマルな"ボーイ&ガール"を登場させてしまう無軌道さよ。"パティ&ジミー"は最近グッズも復刻し、根強い人気を誇っている。1977年の"ララバイラバブルズ"もかわいい。

パステルなタッチの導入もいいが、なんと言ってもネーミングセンスが抜群にいいでないか。男女混成インディーバンドとかにいそうな名前だ。1978年の"ビッグチャレンジ"と"ラビーデイズ"も好き。

"ビッグチャレンジ"はもはやタイトル大喜利の領域だろう。デザインはヒース・キリングに怒られるレベルだが、90年代にがグッズが店頭に多く並んでいた気がする。"ラビーデイズ"はタッチが昔の少女漫画のイラストコーナーのようでいい味を出している。このタッチの統一感のなさも、改めてサンリオキャラクターを眺めて驚いた事の1つだ。1979年の"フレッシュパンチ"も文房具屋でよく見かけた。

しかし、これがサンリオのキャラクターだったとは把握していなかったな。「SODA」と書かれた四角い砂糖のようなものは一体何なんだろう。同年の"タキシードサム"は今でもそこそこの認知度を誇るキャラクター。

毎日違うものを身につける為、365本蝶ネクタイを持っているお洒落さんだそうです。うるう年はどうするのか気になる。やはりこういうよくわらかない設定がキャラクターに奥行きを生むのだな。ドラッグカルチャーへの早過ぎた警鐘ともいえる"トリックトラップ"もいい。

ダメ、絶対。1982年はドリフキャラクターのキュートな書き換え"ゴロ・ピカ・ドン"が登場。

こちらも非常に人気が高かった記憶があります。1983年、お馴染みの「オトコノコオンナノコシリーズ」から"ザ ボードビル デュオ"が登場。

突然タッチが原田治チックになっている。舞台監督と女優という設定の五月蠅さがいまいち浸透しなかった要因でしょうか。1984年は当たり年。大ヒットキャラクター"みんなのたあ坊"も登場です。

知的障害児を連想させる、という理由で市場の第一線からは姿を消したとの噂もありますが、本当なのでしょうか。そして、何と言っても"ザ ラナバウツ"です。

これがサンリオって知らなかったんですが、私、大好きでした!多大な影響を受けて、幼稚園でひたすら模写していたのを覚えています。この丸みを帯びたタッチと色使いがたまりません。まさにこの時代を代表する我が国のポップカルチャーではないでしょうか。また、問題作と言える"トレンドセッターズ"もこの年。

これはどういうつもりで企画したんでしょう。購買年齢層の拡大でしょうか。しかし、時代考証の為の重要な作品ですね。この年は更に"ボ・ボクねすみ小僧だい"というふざけたネーミングのキャラクターが登場する一方で"ピエロ"、"カモメ"など投げやりなネーミングとひねりのないキャラクターも目立ち出します。1985年には、こちらも一世を風靡しました"ハンギョドン"が登場。

人気者でしたねぇ。さびしがり屋のロマンチスト!改めて見ると、藤子・F・不二雄テイストがかなり強いですが、藤子プロから怒られなかったのでしょうか。そんな"ハンギョドン"も何らかの差別問題に巻き込まれて、表舞台からは姿を消しつつあると聞きます。非情に残念です。他にも"ギミーファイブ"も懐かしい。

こちらもサンリオと把握していませんでしたが、グッズ展開が多くされていた。Jリーグブーム前の男の子の味方でございました。"マロンクリーム"も見覚えはある。

しかし、タッチのブレが凄い。サンリオ独特の品性のようなものが損なわれているような気がしないでもない。この年の注目は"カルチャーショック"という概念がキャラクター化している点でしょう。

いやはや、斬新の一言。1986年には"ぽこぽん日記"が登場。

こちらも若干藤子調である。当時からそこそこの人気は持っていたように思いますが、スターまでには至らなかった。1987年の"うめ屋雑貨店"も斬新。

銘菓"ぽたぽた焼きのおばあちゃん"のキャラクターと大いに混同します。しかも、あちらと同様に知恵袋を披露してくれるようです。1988年にはこれぞスターと言っていい"けろけろけろっぴ"が誕生。

もう大好きでしたね。学校の防災頭巾がけろっぴだったくらい好き。オリジナルのけろっぴキャラクターを作ってノートに書き殴り、勝手に物語を紡いで遊んでいた(暗い)。またこの年には"ぽちゃっこ"も誕生。

けろっぴと同期の人気者です。"タバサディーン"も見覚えがある。

欧米キャラクターからの引用感が強い。驚きは1989年の"るるるがくえん"だ。

「あーこんなのあった!」とテンションの上がる一作ではないでしょうか。こちらもサンリオだったのですね、『なかよし』とか『ちゃお』のキャラクターだと思っていました。更に、1989年は"ぽんぽんひえた"と"笑う女"という狂気の2キャラクターの生まれた波動の年でございます。

特に"笑う女"は考案者にインタビューしたいレベル。失われた10年間への準備が整っている感じですね。1990年には"アヒルのぺックル"が登場。

人気キャラクターではありますが、いまいち名前が浸透していない印象。しかし、ドナルドダッグという世界的アヒルのスターがいる中、よくこれを作ったものです。かわいいけども。1991年は"きりん"という投げやりなキャラクターのみの発表。一体サンリオの企画部に何があったのか。こんなわかりやすいスランプってあるでしょうか。その反動か、1992年は"おさるのもんきち"、"ウィーアーダイナソーズ"、"パタパタペッピー"など中ヒットキャラが3つも誕生。



"ウィーアーダイナソーズ"ははやっていたのを肌で感じましたね。男の子の防災頭巾でよく見かけました。私も"パタパタペッピー"のメモ帳を持っていた気がする。そして、1993年の"バッドばつ丸"です。

これは"チョベリバ"という流行語と共に爆発的にはやりましたよね。男女問わず人気がありました。そして、1996年の"ポムポムプリン"も今なお根強い人気者。

これ以降は、ヒットと言えるは2001年の"シナモンロール"くらい。

パッとしたキャラも、突っ込み所のあるキャラもこれと言って生まれていない印象。"ジュエルペット"や"クロミ"などは人気のようですが。最近はキティーちゃんをヒーローに変身させたり、キティの飼い猫を登場させたりして(狂気)、なんとか繋いでいるようです。

とは言え、不動のスター集団がいる限り、サンリオ帝国の繁栄は続くのだ。しかし、その下に多くの死骸が積み重ねられていた事も私達は胸に刻んでおかねばなりません。そして、サンリオは思っていた以上に私たちの生活に根付いた、というのを認識できました。



※追記として、調べた結果"ザ ラナバウツ"は顔が付いてリニューアルされていました。これはショック。
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