青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ayU tokiO LIVE in 下北沢DAISY BAR


『TEKI PAKI』にてayU tokiOのフル編成ライブを目撃。歌とリズムが跳ねている。あの弾けた方は、「生の意味を知るような」瞬間のそれだ。ライブでは、音源と異なりバイオリンやフルートといった管弦楽器が加わるのですが、その甘やかで飛翔感あふれるスコアアレンジがたまらない。傑作カセットEP『NEW TELEPORTATION』は往年のアノラックを想わせるサウンドのMTR卓録音源なのだけど、それらの楽曲も肉体を得たようにピチピチと跳ねている。RIDDIM SAUNTERが『DAYS LEAD』において『LIFE』の多幸感に肉薄した瞬間を思い出した。ギターポップにソウルナンバーの意匠が加わると、それはもう青春で、最高で、幸福感に満たされてしまうものなのだ。日本語詞の新曲「恋する団地」「米農家の娘」の2曲がまた格段に素晴らしかった。「恋する団地」は、練馬のニュータウン光が丘をレペゼンし、「この街の温度はずっと前から変わらないな」と歌われるナンバー。ちなみに光が丘とは東京都練馬区のはずれに位置し、広大な団地、公園、ショッピングモールを有し、あの上戸彩を輩出したニュータウンです。緑が多く整備が行き渡り快適なのだけど、あまりの広大さに圧迫感を覚えてしまうというアンビバレンスを抱えた不思議な街です。「恋する団地」は失敗しない生き方が提唱したという「ベッドタウンポップ」の系譜に連なり、かつtofubeatsの「NEW TOWN」「J-POP」に対する東京からの返答としても機能してしまう楽曲ではないでしょうか。とにかく今年1番の、景色を変えてしまう美しきポップソングなのだ。「米農家の娘」は、筒美京平バート・バカラックなどの巨人の系譜にayU tokiOを置いてしまいたくなるような、スロースウィート。日本語の美しさにも色めきたってしまったので、早く音源化して歌詞を堪能したい次第。そういえば、彼がMAHOΩに提供していたナンバーは「狐の嫁入り」「乙女のたしなみ」など、どれも日本語の響きを重視したタイトルだったな。跳ねたリズムに甘くとろける音色。歌うは鼻声がかった痩躯の薄顔男子。どうしたって私は王子様の再来を夢見てしまいます。「恋する団地」「米農家の娘」の2曲を聞いてもらえれば、それが馬鹿げた夢想ではない事がおわかり頂けるはずなのです。ayU tokiOの音楽には強い野心、そしてチャイルディッシュなまでの万能感が漲っている。それらがポップソングに強烈な眩さをもたらしている。ライブハウスの地下室の実験から未来のポップスターは生まれるのだ。