青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

サム・ライミ『オズ はじまりの戦い』


とてもよかった。3Dは吹き替えしか上映していなかったので2D字幕で観たので、美しい映像技術に関しては堪能しきれたとは言えないのだけど、まずもって脚本が素晴らしかった。細かい設定の粗は山程あるし、完璧とはとても思えないが、通底するエモーションが泣かせるのだ。


物語をオズ(ジェームズ・フランコ)の嘘やハッタリといった軽口が転がしていく。そして、その軽口が「奇術」→「魔法」→「映画のつく嘘」と転化していく様が見事。グリンダ(ミシェル・ウィリアムズ)の「彼らに夢を信じさせてあげて(=嘘をついてあげて)」という願いに思わず涙。"偉大なる大魔術師"オズは”メロンパークの魔術師”ことトーマス・エジソンに憧れる、チンケなぺテン師であった。オズはエジソンの発明とされるキネトグラフを使って、美しく、優雅に、そしてユーモラスに戦う。映画のプリミティブな魅力を最新の技術でブラッシュアップして我々に提示してくれる。その意味でマーティン・スコセッシの『ヒューゴの不思議な発明』と似たムードを持ち合わせている。『オズ はじまりの戦い』とはサム・ライミによる「映画のつく嘘」の肯定の物語だ。


オズの魔法使』と同様に、モノクロ(現実)→カラー(オズ)の演出が施されているのもうれしい。「ライオン」や「案山子」といったモチーフが散りばめられているのにもドキドキする。また、現実の人物がオズの世界において姿を変えて存在するという設定も『オズの魔法使』から引き継いでおり、元カノ→グリンダ、相棒→猿フィンリー、車いすの少女→陶器の少女がそれぞれ転化されている。その反復と差異の中で、「キス」「鞄と帽子」「足」を軸にして、現実で成し得なかった願いを達成していくという構成も実に美しい。しかし、猿のフィンリーと陶器の少女のキュートさには参ってしまうな。

サム・ライミがかわいいものを撮るだなんて!いや、見た目だけで言うとそれなりに不気味なのだけども。更には『スパイダーマン』のグリーンゴブリン、『スペル』のババアを彷彿とさせるルックも登場するサービスっぷり。 これだけでも充分に観る価値のある1本と言えます。