青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

私立恵比寿中学「梅」「頑張ってる途中」「踊るガリ勉中学生」

私立恵比寿中学のメジャー3rdシングル『梅』は恒例のジャケット、カップリング曲違いの3パターンで発売でございまして、3枚全て聞かせて頂きました。

梅

梅(初回生産限定盤A)

梅(初回生産限定盤A)

梅(初回生産限定盤B)

梅(初回生産限定盤B)

ヒャダインのペンによる表題曲「梅」は愛憎入り混じる感じで、日によって是非のジャッジが変わる珍曲です。

メンバーの表現力はリリースを重ねるごとに向上していて、ヒャダインの仕掛けるギミックに見事に応えているわけですが、いかんせんそのギミック、ひいては楽曲全体に手癖感が匂い過ぎる。お馴染のフレーズ連呼「梅 梅 梅 梅」にはもう飽き飽きだぜ、という感じなのですが、そこからしばらく支配する鍵盤のコード感とかはとても気持ちいいから困る。ひなた(柏木ひなた)がギアを入れ替えるパートまではむちゃかっこいい。しかし、どうしても推しきれないのはサビとサウンドの全体的なチープさ。アニソンやヴィジュアル系の悪い所が抽出されているような感じだ。低音ラップりななん(松野莉奈)とか歌い上げるぁぃぁぃ(廣田あいか)などメンバーの振り分けが適材適所過ぎて、手癖ヒャダメロも相まって新鮮味がない。しかし、なっちゃん杏野なつ)の「無視かい!? 無視かい!?無視かい…」とかは好きだから困る。そして、これまたお馴染のももいろクローバーを意識したメタ歌詞も直球過ぎて、果たしてこれはおもしろいのだろうか、という疑問も沸々と。そこで楽しむ感じはもうこの位置まできたら終わりじゃないかしら。



しかーし、待望の音源化、3枚共通カップリング曲である「頑張ってる途中」の素晴らしきクオリティがそのモヤモヤを見事に中和してくれます。

SUPER BUTTER DOGの鍵盤というファンキーな肩書きが嘘のようなオーソドックスなポップソングライティングを存分に魅せつけた池田貴史に賞賛の嵐を。基本に忠実に、正攻法を突き詰めていくと、突然神懸かったものができあがる良例だ。サビ前に転調して助走をつけるような、そんなベタな楽曲をアイドルに求めているのだ、私は!「エビ中」を「Everybody (エビ)バディ」と「頑張ってる途(中)」に分解してKISSの「(チュー)」に転化して、楽しく韻を踏みながら最終的に「宇宙 ウ(チュー)」に到達する言葉遊びもナイス。ラップパートの導入は正しい!そもそもこの楽曲は東京MXで放送していたテレビ番組の企画が発端の「商店街応援ソング」でして、奇しくもアニメ『たまこまーけっと』の素晴らしきシングル「ドラマチックマーケットライド/ともろう」と同様にこちらも商店街ポップスなわけです。人が集まればメロディーが生まれます。



3枚に振り分けられた3曲目のカップリング群ですが、こちらも素晴らしい。まず初回限定盤Aに収録の「パクチー」ですが、こちらは最近評判の高いモーニング娘。のエレクトロダンスチューンをエビ中なりにコミカルに消化したようなナンバー。ライブ会場などのサウンドシステムで聞くとまた一段とよさそうだ。ちなみに作詞・作曲はシライシ紗トリ。彼の手掛けたw-insの「ブギウギ66」結構好きです!次に、初回限定盤Bに収録ジャニーズ作品なども手掛けている飯田清澄のペンによる「大好きだよ」、タイトル通りの事しか言っていないやや中身のない歌詞ながらも、この歌詞にはこのメロディーでなくてはならないという必然に満ちている。故に言葉とメロディーが渾然一体となって跳ねており、実に瑞々しいポップソングに仕上がっています。名曲、と言ってさしつかえございません。



そしてです、今回何よりオススメしたいのはサブカル盤(通常盤)に収録の「踊るガリ便中学生」でございます。素晴らしきメジャーデビュー曲「仮契約のシンデレラ」を手掛けた杉山勝彦のペン。またしてもド級の名曲で、エビ中との相性の良さは確定致しました。トラックはややチープながら、フック溢れる多彩なギミック、そして豊潤なメロディーを見事にはめ込む、美しき楽曲構成。同じコードでもメロディーと歌うニュアンスが少しズレる事でこうも多彩で豊かに聞こえるのか、という反復と差異。そんなポップソングの魅力を、個性豊かなマイクリレーが改めて教えてくれます。個人的な一推しはサビでの安本さん(安本彩花)による「理解していないけどね ペンは」のパートでして、彼女の歌の表現力の更なる進化に感涙。しかし、今楽曲におけるMVPは美味しいパートは多分に与えられているみれいちゃん(星名みれい)でございます。この楽曲は、そのタイトルからしてコミックソング的なものかと思ってしまうのですが、踊るのはペン先で、その「ガリガリ」という音と運動に、「知りたがり」「さみしがり」「くやしがり」「強くなりたがり」という想いを託している。そして、超感動的なみれいちゃんのバース

知りたいだけなんだ  生まれた理由を
知りたいだけなんだ  愛とは何なのか!

この普遍的なありふれた「書く」という運動を真理の探究にまで昇華してしまうこの杉山勝彦の筆圧!号泣必至。書こう、とにかく書こうと思いましたね!僕は。