青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

森は生きている『FOAM OF THE DAZE』


一部の地域で今、最も注目が集まっているバンドと言っていい”森は生きている”の3曲入り音源『FOAM OF THE DAZE』を聞きました。凄いバンド名だ。『森は生きている』って、ロシア文学のほうなんて読んだ事なくて、僕にとってはのび太の学校の裏山の絆を描いた『ドラえもん』のあの名作「森は生きている」だからね!とか思っていたわけですが、歌詞カードを開いて驚きました。そこにはこう記されている。

「ゆめをみていたと思えばいいんだよ。わずかな間だったけど、楽しいゆめを。」
藤子・F・不二雄著 「ドラえもん26巻/森は生きている」
小学館、1981年より引用


そう、これはまさに森に針を落とした時に鳴る音楽。木の葉やキノコのベッド、鳥や虫は友達で、お腹が空いたら美味しいオレンジの木の実を食べればいい。もちろん、そんな喜びは全てほんの一瞬で過ぎ去る夢、幻、日々の泡(『FOAM OF THE DAZE』はボリス・ヴィアンの『日々の泡』の原題)。しかし、私達はこの”日々の泡”に何度でも針を落とし再生することができる。素敵じゃないか。



公式プロフィールの

カントリー,ソフトロック,スワンプ,アンビエント,モンド,エキゾチカ,トロピカーナ,ジャズ,ブルース,キューバ,クラシックなど. . .メンバーの雑多な音楽嗜好により、バンドは唯一無二のチャンポンミュージックを奏でる

に多用な音楽性の列挙に偽りなし。現役大学生が中心となっているとは思えないその音色のセンスに驚かされる。多用な楽器の豪華絢爛な音色、激渋なメロディーセンス。3曲(+ボーナストラック1曲)共に素晴らしいが、やはりハイライトは

みんみん蝉が 鳴き出す季節になったら
僕は 河原で 日向ぼっこをする


松本隆の影響を微塵も隠そうとしないリリックから始まりつつも、現代的なハイブリット感覚の音像で鳴らされる「帰り道」だろうか。いやはや、これが本当に自主制作音源なのだろうか。初回プレスは売り切れ、現在出回っているのは2ndプレスなのだそうだけど、こちらは初回と異なり、あの売れっ子エンジニア得能直也によるリマスターバージョン!ゼロ年代冒頭にMAMALAID RAGが道半ば挫折した「喫茶ロック」というレッテルの払拭と更新は、今、この森は生きているに託された!