「めくらまし!」と「デートソング」の2曲入りで500円。タワーレコード渋谷店のリューアル記念シングルという事で、とりあえず渋谷店限定発売だそうなのですが、一刻も早く全国発展して欲しい名シングルの誕生だ。表題曲「めくらまし!」にバンドの確かなネクストレベルが刻まれている。格段に抜けがかよくなったリズム隊が牽引するポップロックンロールチューン。今回、MC.sirafuがギターレスの隙間を埋めるのはスティールパンでなく(一部使用していますが)、オルガンのような音色のシンセサイザー。これがかっこいい。とにかく暴れまわるようなMC.sirafuのフレージングが痛快で、そこに優しく寄り添うような中川さんの鍵盤プレイもいい。ストレンジでキュートなコーラスワークも磨きがかっていて、ただのポップソングに収まらないズレを施します。ロールモデルは東京事変ということなのだけど、ポップさを微塵も落とすことなく、そこから絶妙にズラしていく。今曲によって中川理沙のソングライティングの強度がaikoや椎名林檎といった超メジャー級と比べてみても決してひけをとらないという事が堂々と証明されたのではないだろうか。歌い出しのメロディーだけでもう決まり!という気持ち。
どれくらい過ごせたんだろう
日々を偽って 飾れば暮らしやすいけど どこかぎこちない
透明だった窓はもう雲って見えづらいな
おんなじなんだ つきまとう 不思議なうしろめたさは
消えないね
常にフラットな印象をもたらしていた中川理沙の歌が跳ねてドライブしている。ソングライター中川理沙の「生きづらさ」「居心地の悪さ」が独特な言語センスで歌われているのだけども、
ヒューっと鳴るだれかの口笛が
世界を変える合図で
というラインにひっぱられるようにして、楽曲は世界の構造をひっくり返してくれる。アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ『星の王子さま』の中の「大切なものは、目に見えない」という現在でも多く引用されるそのフレーズの意味を、「めくらまし」というワードに託すセンスを信頼したい。更に
飛びまわる 水蒸気のように
かたちにはなれない
隙間からひゅんとすべりこんで
きみをつかまえてみせるよ
という歌詞に、めくらましのアクションを盛り込み、
見えづらいやさしさの裏には たまにきみの涙が見えた
本当は見逃したくなんてないのに
とつないで
見えないところがたったひとつの 希望なんだよ
で結ぶ巧さ。嘘とか偽りだとかのネガティブさに潜む、目には見えない本当の事を救いだすその視線。こういうポップソングがあるから、生きていける。