青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ayU tokiO『New Teleportation』


特にお気に入りは「MY ROOM」「超時空転移装置」の2曲だ。ドキドキするほどにポップ。やや時代遅れの感もある、MTRによるローファイな多重録音作品にこんなにもときめいている事に驚いてしまう。何といっても曲がいいのだ。ayU tokiOは音楽前夜社が誇るミラクルポップユニットMAHOΩのソングライターの1人。この音源のサウンドは英語詩で歌われる所謂ギターポップなのだけども、そのソングライティングの瑞々しいポップセンスは不変だ。


歌詞に目をむけると。どこか内省的なティーンエイジャーの情景が浮かぶ。タイトルはニューテレポーテーション。ayU tokiOがその「超時空転移装置」を使って、自身のベッドルームと繋げようとするのは、かつてのグラスゴーもしくはかつての渋谷だろうか。Aztec Camera、ORANGE JUICE、THE PASTELS、Teenage FanclubBELLE AND SEBASTIAN、ヨシノモモコ、Lollipop Sonic、Flipper’s Guitar。部屋の壁に所狭しと貼られた憧れのバンドのポスター、ヘッドフォンをしてパジャマ姿でベッドに立ち上がり、ギターをかき鳴らすどこか内向的な少年。そんなロマンティックな画が浮かんでくる。今作はカセットテープというフォーマットでリリースされていて、モコモコとした音像もバッチリはまっている秘密の部屋で回転、再生。過去への慈しみと未来への憧れ。それがayU tokiOが夜な夜な行っている実験だ。ayU tokiOの実験はライブに場を移すとヴァイオリンやフルートといった弦楽器、管楽器とMTRサウンドの融合にまで及んでいる。The Sound of Young Japanese。外へ飛び出すための音楽だ。

ずいぶん前の出来事に 私たちはときどき立ち止まり
また次の一歩を、踏み出していく


「TELEPORT」

“新しさ”というのはいつだって、どこか懐さを含んでいるものなのかもしれない。