青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ホン・サンス『ハハハ』


女性の身につける青と街の青ががとても魅力的な映画。そして、やはりこれも反復と差異の映画であるように思えて、「あれ、それってエヴァじゃん!」なんていうボンクラ夢想に耽りつつ、エリック・ロメールウディ・アレンの会話劇に想いを馳せる。


タイトルの「ハハハ」というのは韓国語の「ハ(=夏)」の連韻と笑い声のダブルミーニングだと思われる。2人の男が酒を交わしながら、夏のバカンスについての記憶を1エピソードごと交互に語り合う。何杯もの乾杯と共に語れられるそれらの夏のエピソードは実にバカバカしく楽し気であるのだけど、実は2人が気づいていないだけで、そこに登場する人物達は大いにかぶっているのだ。同じ人物、同じ場所、同じシチュエーションを反復しながらも当の2人だけは交じり合わない。夏の記憶のいい面だけをそれぞれが話している2人なのだけど、その裏に広がる人々の愛憎劇を知る我々には、どうにもそれが素敵な思い出話には聞こえてこない。しかし、その様子はコメディライクで「ハハハ」と笑ってしまうのだけど、その実、永遠にすれ違い続け交じり合う事はない、という人生の残酷な真理が横たわっているよう。すると「ハハハ」という音も諦め混じりの乾いた笑いに転化して聞こえてきやしないか。しかし、そんなものを提示しておきながら、ホン・サンスの映画から感じられるのはアイロニーでも警告でもなく、ただただ純粋な人間と空間への興味のように思える。実に不思議なのである。この山も谷もなく、実にしょうもない男女の恋愛における会話で重ねられたこの映画に何故こんなにも惹かれてしまうのか。それは恋愛が抱える命題と魔力そのものだ、という気もしてくる。ホン・サンスの恋愛と映画についての考察だ。