青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

黒沼英之ワンマンライブin渋谷WWW

渋谷WWWで開催された黒沼英之の初のワンマンライブを観てきました。

時の流れが愛おしくなるようなじんわりとしたいいライブ。アーティストとしての成長っぷりを見せつけてくれました。渋谷WWW(元映画館!)の音響のよさにも改めて興奮した。バンドの演奏を艶やかに聞かせてくれる箱だな、とは思っていたのだけど、ボーカルの声もあんな風に鳴るんだな。サラウンドで上から声が降ってくるような体感。ゾクっとしたな、あれは。そして、黒沼英之の歌の上手さ、切実さというのを改めて、実感できた。音源以上の抜けのよさに驚いたお客さんも多かったのではないでしょうか。演奏もベース隅倉弘至(初恋の嵐)、ドラム岡田梨沙(D.W.ニコル)という派手さはないものの歌を聞かせるのに特化した堅実なプレイヤー陣。個人的なハイライトは「パラダイス」というナンバー。黒沼英之という歌手のメンタリティというか、もっと言えば魂が鳴ったような楽曲だと思う。確か記憶によれば、彼が白石和彌による2010年の映画『ロストパラダイス・イン・トーキョー』にインスパイアに受けて作られた楽曲。あらゆる抑圧から解放された桃源郷を、ここではないどこか、でなく今まさに足をつけている場所に見出す、そんな決意が鳴っている。あらゆる抑圧、例えば、職業、年収、性別、外見だとか、他にもたくさんあると思うのだけど、私たちを規定してしまう枠組みがこの世の中に溢れていて、とにかくもう窮屈なわけだ。黒沼英之は歌でもって、それらを1つずつはずしていきたいのじゃないかしら。それで、あらゆるものが曖昧になった状態の中に浮かび上がる一筋の何かを、掬い上げて歌にしたいのだと思う。

踊り続けるんだ 夜が明けるまで

今や代表曲と言ってしまっていい「やさしい痛み」「blue」のナイーブさから一歩先に歩み出す力強さに満ちていて、グッときてしまったのです。新しい代表曲の誕生だ。その一方で「東京ライト」や「26」といった広くポピュラリティを獲得しそうなナンバーもあるわけで、一体どちらに転がるのか。願わくば、楽曲の強度に更なる磨きをかけ、槇原敬之aikoらのような偉人だけが辿り着ける彼岸へ。大衆にまみれながらも、崇高さをキープし続けるポップシンガーになって欲しいのだなー。