青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

テニスコーツとほうほう堂『TERATOTERA祭り』


広場に置かれた巨大な建物の残骸。何でも今年7月に閉店された「いせや公園店」の残骸らしい。今にも崩れそうなそれらの解体作業が始まると、その周りをテニスコーツの2人が慈しむように円を描きながらギターとピアニカで演奏を始める。ほうほう堂の2人は、その慈しみの円を広げていくかのように駆けずり回る。井の頭公園のシンボルであったいせや公園店。私は酒飲みでないので入った事はないが、うれしそうに昼間から立ってお酒を飲んでいる人達の顔、旨そうな食べ物の匂い、なんかは容易に思い出される。テニスコーツとほうほう堂が行っているのは建物に染みついた記憶への祈り、供養だ。そして、4人はその円を抜け出し、公園の森へ向かいパフォーマンスを続ける。自然とそれに付いて歩く人々。きっとテニスコーツもほうほう堂も全く知らない人達もたくさんいたはず。公園の(=日常の)様々な表情を引き出すほうほう堂のダンスが素晴らしい。


方々に動きまわり、テニスコーツのサラウンドな音響をより拡張させていく。遠くからは建物が壊されていく音が響いてくる。ほうほう堂のダンスを観ていて思うのは、身体の不自由性、そしてそれ故に生まれる発想の自由さだ。それはとても刺激的な体験である。