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九井諒子『竜のかわいい七つの子』

九井諒子の新作短編集『竜のかわいい七つの子』を読んだ。

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子 (ビームコミックス)

話題をかっさらった短編集『竜の学校は山の上』
竜の学校は山の上 九井諒子作品集

竜の学校は山の上 九井諒子作品集

に劣らぬ傑作。「異世界との融和」というのはもはや巷に溢れかえっているテーマなのだけど九井諒子は一味違う。竜とか人魚とか神様とか超能力とかとにかく色々出てくる。そういったファンタジックな表現がミクロな絆の話に着地するという、表現を「どうジャンプするか」でなく「どう着陸するか」がキモになった構造をとっているのがこの作家の面白い所だと思う。高野文子とか大島弓子といった巨人から、市川春子とか九井諒子という新たな天才が生まれて、どちらも似たテーマを描きながら、全く違う手法で違う味わいの作品を書く。おもしろいですね。後、九井諒子は設定の細かさとか情報量の多さで、本当でない事をいかにも本当らしく描く所が読んでいて楽しいですね。作者が乗りに乗って嘘をついているのが伝わってくる。
竜のかわいい七つの子』では「金なし白祿」がぶっちぎりで素晴らしい。「本物が飛び出してくるような絵」という本来書けるはずのないものに漫画という表現で果敢に挑んでいる。小説や落語などでなければ成立しない話(これを映画で平気で撮っちゃう監督がいたらそいつはニセモノだ)を無謀にも漫画で描き切っているのだ。更にラストでは主人公に「絵を書いていてよかった」とこぼさせる。絵に裏切られ、絵に救われる、漫画家の描くそんな作品に心打たれないわけがないのだ。後、「犬谷家の人々」と「わたしのかみさま」もお気に入り。