青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

昆虫キッズワンマンライブ『Te Ni Wo Ha』


久しぶりに心の底からロックミュージックをかっこいい、と思えた。ありがとう、昆虫キッズ!ちょっと前までの昆虫キッズはその無邪気さを失い、どこかシリアスさに喰われてしまっているように見えたのだけど、『こおったゆめをとかすように』という傑作アルバムをものにしたバンドの充実が窺えるライブだった。適当な空気を纏いながらも、明確に伝えたいことがあり、そして、それを伝えたい対象をしっかり会場に詰め掛けたお客さんに見ていた。

ずっと演奏しているとひとりぼっちみたいな気持ちになって淋しくなるから

と言ってみたり、ライブを終わらせたくなくてウダウダと喋り続ける高橋翔。切実にコミュニケートしようとしているその姿に胸打たれた。しかし、1曲目からバッチリかっこいい昆虫キッズなんて見るのはいつ以来だろうか。悲しみを刻むような高橋翔のリズムギターとそれを切り裂くような冷牟田敬のギターとキーボードの音色。そして、フラフラと音符を揺らめき漂う高橋のボーカルをしっかりと支え、ときにはみ出す佐久間裕太とのもとなつよの強靭なリズム隊。そうだ、このアンサンブルが僕を再び音楽に夢中にさせたのだった。「まちのひかり」「いつだって」「サマータイマー」「27歳」「シンデレラ」といったお馴染みのレパートリーに加えて「アメリカ」「わいわいワールド」(サウダージ感の増したアレンジ)なんてナンバーが聞けたのもうれしかった。しっかし「恋人たち」の

湿度が上がってピアノは溶けて 僕らの神経が紡ぎ出す音楽
何か企んでる顔 子供のままね
首のにおいに酔って前が見えないんです

なんて歌詞は本当にセクシーでリリカルで、かつ昆虫キッズの音楽そのものを表している。しかも、この曲には「Life is comin' back!」というラインも隠されているのだ。そして、何より感動的だったのはニューアルバムに収録された新曲がことどこくかつてのレパートリーを越えてかっこよかったこと。「主人公」に昆虫キッズのネクストレベルをはっきりと観た。あぁ、「若者のすべて」も「裸足の兵隊」も「ASTRA」も「CHANCE」も「街は水飴」も「Littele Boy」も「Bird」も「桜吹雪だよ」もよかったし、本当に『こおったゆめをとかすように』は名盤だ。アンコールではDeerhunterの「Nothing Ever Happened」まで飛び出す。次のDeerhunterの来日公演の前座こそは絶対に昆虫キッズでないとならない。そして、最後に披露された昆虫キッズ最速ナンバー「胸が痛い」がすんばらしくて、思わずちょっと泣いてしまった。曲の始まりあの4人でせーので鳴らされたあの一音がロックンロールなんだと思った。

胸が痛い 胸が痛いから 本当のこと僕に話して
悲しみが好きなんだもん だってずっと僕ら友達だろ
胸が痛い 胸が痛いから ファンタジーもっと君らにあげる
スイートガールスイートホームオールアローン 憧れってやつを抱きしめて