青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

わっしょいハウス『エーテル』

わっしょいハウス『エーテル』を新宿画家画廊地下スペースにて観劇。

舞台は夏の京都。古い一軒家に共同生活する若い男女5人、そこに管理人と犬。そしてどうやら大量に発生しているらしい「エーテル」と呼ばれる謎の生物(?)。何かが起こりそうな予感に満ち満ちている。しかし、会話もロマンスもどこか空回りで、始まりそうで始まらない。花火は上手く打ち上がらないし、せっかくの観覧車にも乗る事はない。それらの空回りの循環運動は、謎のままの「エーテル」に託される。彼らは秋の訪れと共にグルグルと渦巻きとなって、空の彼方に飛んでいってしまう。素敵な予感だけに満ちていて、結局何も起こらない僕らの夏が「少し不思議」に可視化されていて、心地よかった。
今までの作品同様に、時間軸と空間軸がねじている。今まさに体験している彼らと、それを振り返るように話し合う彼らが、同時に舞台上に存在しているのだ。初期作品はほぼ1シチュエーションの中でその方法が行われていたのだけど、前作の『まっすぐ帰る』から彼らは部屋から街へ飛び出している。彼らの住む街を描き出す事もしながら、しっかりとその中で軸をズラしている。相当複雑に絡み合っているはずなのだけども、観賞の感覚はシームレスで快適だ。これはかなり高い技術なのではないでしょうか。そして、それに応える役者の技術も極めてレベルが高い。特に、椎橋綾那の演技メソッドの斬新さとキュートさには観る者全てが目を奪われるだろう。私も大ファン。あの居心地の悪そうな表情と声と身体の動かした方は、時間軸と空間軸を移行するものにこそ相応しい。彼女こそ時をかける少女だ。劇団所属員ではないようだが、彼女と表情と浅井浩介の声が、わっしょいハウスという劇団のイメージを見事に体現しているように思う。
まぁ、とにかく面白かったし、とても好き作風なのだけど、もっと面白くできると信じております。わっしょいハウス五反田団直系の劇団と考えても問題はないと思うのだけど、本家に比べると、会話の密度が薄過ぎる箇所がちょいちょいあり、90分という上演時間を走りきれていないように感じた。五反田団は脱力しきっているようでいて、脚本に緩みはほとんどないのですよね。しかし、わっしょいハウスの犬飼勝哉のテクニック、笑いのセンスに絶大の信頼を置いていますので、更なる傑作の上演を信じて待つ!