青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

ナカゴー『黛さん、現る!』


面白かった。以前観た『ダッチプロセス』は、「悪いハンバーガー」に侵略され、食の危機に始まり「どうして今まで安全、安心と思っていたのかわからなくなった。外に出るのが怖い!」というのが展開されるという、語り口はコミカルながらモロに震災後の空気を吸い込んだ作品だと個人的には思っている。生への執着のバランスを調整して何とかやっていこうよ、という諦観に満ちた結末が物足りなく、かつハンバーガーの扱いの悪さも相まって(ハチャメチャを履き違えている)この劇団にあまりいい印象を持っていなかったのだけど、今作はとても好きでした。ハチャメチャがいいベクトルに向いていた。ちょっと尋常じゃないあの不細工な乱闘の長回しは一見タチの悪いジョークだが、振り降ろされるはずのなかった鉄鎚をブンブンと振りかざすあの墨井鯨子に私はなんだかレジスタンスの姿を重ねてしまった。BGMはもちろんザ・ブルーハーツの「ハンマー」だ。

ハンマーが振り降ろされる
僕達の頭の上に
ハンマーが振り降ろされる
世界中いたるところで


でたらめばかりだって
耳をふさいでいたら
何も聞こえなくなっちゃうよ

とにかくこの無茶苦茶滑稽な作品に僕は勇気をもらいました。「海に行こう」(=死にに行こう)という提案を強行突破するのに対し、狂信的なまでに反対する、という構図にまたしても何かを照らし合わせたくなってしまうのだけど、まぁ、それはいい。ラストにつけられる冷房のスイッチで、煙にまかれてしまうわけだから。
そして、とにかく役者がいい。役者が新しく出てくると「あぁ、強烈なこのキャラで最後までひっぱるのか」と思うのだけど、それがどんどん更新されていく快感。『ゴッドタン』での出演でテレビサイズでもその存在感が通用する事が確認された篠原正明ですら振りで、まさかの壇れいの登場で沸点を迎えるかと思いきや、墨井鯨子と高畑遊が更にギアを上げてくるんだから恐ろしい。チェルフィッチュでお馴染の佐々木幸子(野鳩)やアゴがかわいい甘粕阿紗子(カムヰヤッセン)も素晴らしかった。