青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

tofubeats 『水星 feat オノマトペ大臣』


久しぶりに堂々とアンセム然とした佇まいの楽曲の登場が喜ばしい。神戸の夜の匂いを吸い込んだエレピアノとシンセサイザーのアーバンメロウサウンドが心地よい。別に新しくとも何ともないけど、オートチューンをかけたボーカルがいいのだ。ちょっとだけ声を加工してみれば、恥ずかしがり屋の僕達も、少しくらいはかっこつけられそう。そして、完璧なイントロとアウトロがある。キラーチューンの必須条件。その始まりと終わりの間だけは煩わしさを忘れてさせてくれるどこか違う場所へ連れて行ってくれる。

めくるめくミラーボール乗って水星にでも旅に出ようか

ミラーボール。「水星」は巷では、10年代の「今夜はブギーバッグ」!はたまた新世代による「Rollin’Rollin’」なんて呼ばれたりしているようで、となると、これは夜な夜な音楽が鳴り響くパーティーの歌なのだろうか。そうなってくると正直距離を感じてしまう。行かないしな、クラブ。もちろんtofubeatsはダンスフロアを中心に活動するアーティストだ。しかし、この楽曲に綴られているのは、日々の暮らしの中に音楽が流れ込むことで立ち上がる、特別な瞬間であるように思う。そうです、僕らにはi-phone、i-pod、i-pad、カラオケボックス、漫画喫茶、それにdommuneustreamだってある。いつだってどこでだって音楽は鳴り響くし、パーティーは始められるのだ。街のざわめきさえも取り込んで、3分間だけ夢見たいから。パーティーでのロマンスの描写に徹した「今夜はブギーバッグ」や、レコードの回り回る循環にロマンを託した「Rollin’Rollin’」も素晴らしいのだけど、ceroなどにも通ずる感覚を持った、いつでもどこでもステップを踏める世代であるtofubeatsオノマトペ大臣による「水星」はやはり最新で格別だ。