青春ゾンビ

ポップカルチャーととんかつ

五反田団『宮本武蔵』


三鷹市芸術文化センターで五反田団の新作『宮本武蔵』を観賞。剣豪演劇。とは言え、いつもの五反田団で、いつものように傑作。脱力宮本武蔵。どうにも私たちは井上雄彦の『バガボンド』という傑作の宮本武蔵像が刷り込まれているので、そのギャップでより笑えた。ホモソーシャルな男子中学生マインドもふんだんに散りばめられていて気持ちいい。退屈や気まずさや恥ずかしさがエンターテイメントに昇華する瞬間を観るのはたまらない。


最初は「ござるよ」の言い回しの音で遊びたいだけ(秀逸でした)で時代劇にしたのでのないか、とか思ったのですが、そういうわけでもないようだ。コミュニケーションという刃が本当に刀として具現化している。「人と人が真剣に向かい合う」の語源は調べてないけど、きっとそういう事なのだろう。刀を抜かないけど、刀を手放す事もしないディスコミュニケーション宮本武蔵を前田司郎が完璧に演じていて、本人は謙遜しているけども、やはり前田作品での役者としての前田司郎は至高である。そして、真剣に向かう合う、「いい侍」は金子岳憲(exハイバイ)だけなのですね。とてもいい佇まいだった。


現代病でもあるコミュニケーション不全を笑いに包めてはあるもののゴロっとした形で提示してくる。警告でも肯定でもなく、生々しくありのままを見せられるので効いた。ゾッとするような場面でも笑いが起きていた。それって結構すっごい事だと思うのだけど、きちんとどちらか(の感情)に傾倒していないと納得しない人もいるようで、そういう人にオススメしない。ふざけているようですっごい真面目な五反田団らしい一撃だった。


五反田団っていつも「席が埋まってません」とか「チケット余っています」ってつぶやいてて、本人も「伸び悩んでいる」みたいな事を言っているけど、本当なんだろうか。ここ1年ちょいで発表した『俺のお尻から素敵なメロディー』『五反田怪談』『五反田の夜』『びんぼう君』『チャンポルギーニとハワイ旅行』と、どれも傑作揃いだったと思うのだけど。名前がね、演劇初めて観ようっていう時に、「五反田団」ってのをチョイスし難いってのはある気がしますけどね。